ちいさくて茶色い彼 | 冥王星移住計画

ちいさくて茶色い彼

昨夜、パソコンに向かっていると、左のひじになにかが飛びついてきた。
「彼」だった。動転した私が狂ったように腕を振るうと、彼は床に落ちた。
彼はまるでじっと状況をうかがうかのように床に伏せたまま動こうとしなかった。
──やらなければやられる。
そう思った私は捨てる予定だった雑誌を彼の上に落とした。さらにその上に厚くておおきめの本を落とした。そして、確実に成仏していただくために、グシャッといういやな音を想像しつつも、おそるおそる二冊の本の上をぐりぐりと踏んだ。

おおいなる一歩だと思う。これまでは彼を見かけると逃げていた。よくある「除去用具」を手ごろな場所において逃げるという弱腰の対応をしていた。積極果敢に攻めたのは進歩だといっていい。

戦いの終結から半日以上が経過した。が、まだ雑誌をどかして彼の亡骸を処分するにはいたっていない。こわくてどかせずにいる。グロテスクな光景が目に浮かぶ。飛び出た内蔵が床と雑誌にべったりとつき──。
ひとつきくらい放置すれば干からびてすこしはましになるだろうか。