「どうしたの?」
春子さんがふりかえりました。月子さんはいそいで手をふりました。
「いいの。何でもないの」
「だいじょうぶなの?」
「少し足が痛いだけ。いいから先にかえって」
春子さんはなっとくのいかない顔をしていましたが
「じゃあね」
といいのこしてぱたぱたと行ってしまいました。お昼が近いのでおなかがへっていたのです。
月子さんはすっかり形のくずれた靴をとほうにくれてながめていました。つま先もかがともぱくぱくとやぶれもうはいていられなかったのです。
道のわきでうずくまっている月子さんをあとからあとから下校する生徒たちがふしぎそうな顔をしてのぞきこんで行きました。
(しかたないわ。はだしでかえろう) と決心をして、月子さんが靴をぬいだ時でした。
「これ、はいたら」
とぞうりをおいてくれた手がありました。それはくろずんだゴムぞうりで月子さんの足には合わないものでしたけれど、はけないことはありませんでした。たとえ男の子のものでもはだしでかえるよりはましです。
「ありがとう。でも( あなたが困るでしょう)」
といいかけて月子さんはびっくりしました。ゴムぞうりを貸してくれたのは大山くんだったのです。
「さ、早くかえろう。また雨が降ってくるかも知れないしね」
大山くんは使えなくなった月子さんの革靴を持ってくれました。
「ぼく、近道を知ってるんだ。行こ」
大山くんのいう近道とは本通り商店街の裏のせまい小路でした。子どもでも体をひねってでないと通れないようなドブ板の上でしたが、家へは早くつくことができました。