LAW ABIDING CITIZEN

F・ゲイリー・グレイ監督  2009年 アメリカ


 愛する妻と娘を目の前で二人組の男に惨殺された男クライドの復讐劇。ただし、話は単純ではない。犯人はすぐ捕まったのに、証拠不十分で勝算がないからと、担当検事ニックが勝手に主犯との司法取引をしてしまう。結果、共犯の男は死刑になり、主犯は禁固3年。復讐は、まず主犯の男、そして司法取引に関わった人々がターゲットになっていく。


 タイトルの「Law abiding citizen」は、裁判所でクライドが「私は法を守る善良な市民です」と口にする、アメリカの司法制度の矛盾を突いたもの。

 自分の証言は事実なのだから分かってもらえる、もしダメでも裁判の席で真実を訴えたい、というクライドの心情に、最初は共感する。野心家の検事ニックが司法取引を選んだ理由のひとつは、自分の手掛けた事件の高有罪率維持でもあるのだから。

 ただ、クライドはただ傷つき怒れる被害者遺族ではなく、けた外れの殺害能力を持った人物。ニックの外堀を埋めるように、知能と特殊技術を駆使した遠隔殺人が実行に移される。


 いったいどちらに肩入れすればいいのだろう・・・と思った頃に結末。本当に後味の悪い映画だった。いや、これは正確な表現ではないかもしれない。自分で考えてみろ、と放り出されて、途方に暮れてしまったと言うべきか。

 

 クライドにジェラルド・バトラー、ニックにジェイミー・フォックス、かなり見応えがあります。その分、観終わった後のやるせなさもずっしりでした。しかし、こんな遠隔殺人って本当に可能なの?