下流の宴
林 真理子 毎日新聞社
大企業でそこそこ出世した夫にふたりのかわいらしい子ども。特別裕福ではないけれど、それなりに教養のあるきちんとした中流家庭を築いてきた。それが、息子の高校中退からなにかが狂い始めた。バイト生活、家出、同棲、しかもこちらの意に染まぬ女の子と。
いつの間にか「下流」になろうとしている。なぜ?なぜ?なぜ???
この母親、メンツばかり気にする嫌味なヤツだ。でも同時に、自分の子どもや家庭を守ろうと必死のありふれた、いや、ちょっと方向性を誤っているとしても、見方によれば十分にいいお母さんでもある。
しかし、世の中の流れは彼女に厳しい。
こういう人、けっこういるんじゃないかなぁ。。。
一方、彼女の息子が同棲した沖縄出身の女の子(22歳なのだけれど、「女性」というより「女の子」のイメージ)は、一般的にイケてる女ではないけれど、まっすぐで堅実でのびのびチャーミング。
とんでもない目標に向かってがんばることになった彼女のことを、周囲のいろんな人が応援してくれる。
田舎から出てきて愚直にがんばる女の子、ハヤシさんはシンパシーを持って書いているようにも思えた。
物欲も覇気もないけれど心優しい息子は、最初、ガツガツしてなくて魅力的にも思えたけれど、最後までそれだけだった。それが妙にリアルだった。
もっとも私には、ちゃっかり者の彼のお姉ちゃんの発想のほうが理解しやすいのだけれど。
格差社会は現実。その中で、例えばこの母親が幸せになるには、発想を根本から変えなければいけないのかもしれない。
私が何より感じたのは、怖いのは物質的な格差ではなく、希望の格差なのだということ。そこに、絶望と希望がある。
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