無理
奥田 英朗  文藝春秋

 合併3町の頭文字をとって名づけられた「ゆめの市」。この雪降る過疎の町に暮らすケースワーカーや高校生、市議会議員ら5人のひと冬に、現代ニッポンが抱える問題が凝縮されている。


 格差、シャッター通り、生活保護の不正受給と受給抑制、違法な訪問販売、移住外国人との軋轢、主婦の援助交際、大人の万引き、引きこもり、機能不全家族、歪んだオタク、怪しい新興宗教、老人医療の惨状、土建業者と地元政治の癒着、キッチンドランカー・・・・もう、満載!


 根っからの極悪人など、そういない。

 たまたま自分が置かれた状況の中で、深く考えることなく、でも普通に生きてきたつもりがこんなところへ行き着いてしまった・・・そんな声が登場人物の誰もから上がりそうだ。そして、どうにかしろって言われたってどうすりゃいいの?無理!もう、無理!!と。


 最後に、主要な舞台のひとつである町の大型商業施設そばの交差点で多重事故が起こり、細い線でつながっていた5人全員が巻き込まれる。


 そして???読者は放り出される。


 どうすりゃいいの?私。



 いつもの上手い語り口に乗って読み進めれば、行き着く先に救いやオチはない。

 えっ?と小さくつぶやいて本を閉じ、しかし本当に行き着く先に何も見出せないのは、この登場人物たちだろうと思った。もし自分がこの本の中を生きているようだと感じる人があったなら、どうすればいいだろう。特効薬は思いつかないけれど、人と連携すること、自分自身が変える意志を持つこと・・・。希望は誰にもあると思いたい。



無理/奥田 英朗
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