ジーン・ワルツ

海堂 尊  新潮社


 若手の敏腕産科医師、クール・ウィッチ(冷徹な魔女)こと曽根崎理恵が、現場を知らない権力や権威に対抗し、するりと彼らの裏をかいてしまう。海堂さんお得意の小気味良い展開です。


 舞台は、東京の有名大学病院と、閉院を間近にした産婦人科医院。


 人ひとりが生まれて出るとは、どんなに奇跡的なことなのか。学生たちへの講義に、こちらもへぇ~と驚く。


 小さな医院を訪れる妊婦たちを通して描くのは、不妊治療や代理母も含めたさまざまな妊娠と出産。


 ところで、この医院の院長は三枝茉莉亜という年老いた女医。。。三枝?そう、「極北クレーマー」で医療事故で逮捕された三枝医師のお母さんなのです。背景に権力闘争が匂う不当な逮捕にもかかわらず、それに乗せられた格好のマスコミと市民たち・・・でした。


 医療行政のひずみで疲弊する現場の医師たち。

 地方からじわじわと崩壊していく医療現場。


 人工授精や代理母という先端医療をモチーフにしながらも、読後に私の中に強烈に残ったのは、こんな医療現場の実態をなんとかしなければ、という著者の叫びでした。

 

 もっとエンタメとして楽しむべきかな?


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