「夜想曲集」というタイトルにぴったりの5つのお話。

 しっかりとデザインされた、優雅だけれど温かみのある椅子に座り、しかもそれが身体を包み込んでくれるようにしっくりくる・・・。奇妙な例えですが、そんな読後感でした。

 

 「わたしを離さないで」は語られる内容に衝撃があったけれど、やはりこの感触は共通するもの。

 あれから4年!というのには驚きです。



 副題にあるように、「音楽と夕暮れ」が共通するモチーフ。

 ベネチアで、ロンドンで、ハリウッドで、それぞれに男女の織り成す一シーンが描かれる。


 人生はどれも、他人が見るほどシンプルではなくて、時が経つほどに少しずつ色を加えられた絵画のように陰影に富むものとなる。



 音楽に対する思い入れを感じ、あらためて筆者略歴をみると、イシグロさん、一時はミュージシャンを目指していたのですね。


夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語/カズオ・イシグロ
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