お目当ての本のそばにあって買った「反貧困」、先に読了!
「年越し派遣村」で広く名前を知られた湯浅誠氏が、90年代からの活動をベースに日本社会の抱える問題「貧困」の現状と、それを何とかしようとする動きについてまとめたもの。
副題にあるように、今の日本は、一度足を滑らせたなら、そのままどん底まで落ちてしまう「すべり台社会」なのだという。つまり、公的なサーフティーネットがその役割を果たしていない。
「貧困」という問題が深刻なのは、実はその実態が見えないからだという。
単に仕事がなかったり、手持ちのお金がないだけではなく、貯金とか支えてくれる人間関係とかいう「溜め」がない状況。これは、ノーベル賞受賞のインドの経済学者アマルティア・セン氏にも通ずる考え方である。
そして、そういう人が多く出てくる社会というのは、社会そのものの「溜め」がなくなっており、それはやがて広く社会全体にマイナスの影響を及ぼしていく、というのだ。
恥ずかしながら私も、本書に挙げられている「自己責任論」に賛成している面が幾分あったことを否定できない。
しかし今、「溜め」を失っていく組織や社会の脆弱さは実感しているし、これは誰もが他人事とやり過ごさないで考えなくては大変なことになると思っている。
それにしても、今さらではあるけれど、筆者の行動力はすごい。
現場を知る人ならではの具体例と、すっきりした論の展開。とても分かりやすく学ぶべきことの多い一冊だった。
- 反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)/湯浅 誠
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おまけですが・・・以前に英語で読み切った(これが稀有なこと!w)バーバラ・エーレンライク「ニッケル・アンド・ダイムド--アメリカ下流社会の現実」が文中に出てきて、それだけでうれしくなった私です(^▽^;)