ヒトラーの贋札

DIE FALSCHER / THE COUNTERFEITER

ステファン・ルツォヴィツキー監督　　2007年　ドイツ・オーストリア

　ナチスによる史上最大の贋札作りベルンハルト作戦。ドイツのザクセンハウゼン収容所でこれを強いられたユダヤ人たちを描いた作品。

　収容所の酷さは言葉には尽くしがたいもので、それは多くの他の映画でも描かれているが、ここでは、他の捕虜たちに比べてずいぶんましな生活である代わりに、偽のポンドやドルを作ってナチスを助けるという精神的苦痛に苛まれる。

　そして、極限状況で見えてくるさまざまな人間性。

　主人公サリーは、もともと贋札作りをしていた犯罪者だが、仲間を守り、助け、とにかく生き延びようとする。

　「今日の銃殺より明日のガス室」って・・・ブラック過ぎるけど、そうなんですよ。明日にも戦況は変わるかもしれないのだし。

　こういう状況を示されると、泰平の世でのほほんと暮らす私は、何をしゃべっても自分の言葉が空疎に思えてしまう。。。

　「とにかく、生きていれば何とかなる」といった主旨の緒方貞子さんの言葉を思い出し、サリーの強さと、人間の誇りって何だろうなどということを考え、また黙り込む。

　原作は、自分の主義を曲げず、あやうく仲間を銃殺の危険にさらしてしまう印刷技師ブルガーが書いたものと知って、ちょっと苦笑。

　さながら、映画ウィーク