いよいよ地域リーグ決勝大会が始まる。
今では、「全国地域サッカーチャンピオンズリーグ」というなんだオシャレなネーミングになっているが、私の知る限り日本で一番過酷で残酷な大会ではないかと思う。
私が参戦したのは、2005年大会。
当時FC琉球のスタッフをしながら、現地では応援に声をからせ、共に戦っていた。
その年は、九州リーグの1位がロアッソ熊本、2位がFC琉球という結果で、なんとか滑り込みで出場資格を掴み取った。
選手には、東京ヴェルディで活躍した藤吉信次選手や永井秀樹選手、他にもJ経験者や、その後JFLを飛び越えてJクラブに移籍するほどの実力者もいた。
サッカーは、与那城ジョージ監督が徹底的に叩き込んだパスサッカーで、九州リーグとは思えないほどの華麗なパスワークと、見ているものを惹きつけるテクニックで、地域リーグにしては珍しく、3000人余りのファンが毎試合集まるほど盛り上がっていた。
しかし、その華麗なサッカーを、その大会で捨てることになる・・・
地域リーグ決勝大会をあまりご存知ない方のために簡単に説明するが、この大会は、九州・関東・関西、など1年を通して各地で行われた地域リーグの優勝者や上位チーム(詳しくは調べてね)が集まり、1次リーグ・決勝リーグを短期間で戦い、JFL昇格を争う。
Jリーグ入りを目指しているクラブは絶対に通らなくてはならない場所である。
1次リーグは、3−1、4−1と勝利を納め、危なげなく突破し決勝リーグに進んだ。
沖縄から参加したFC琉球は、この1次リーグの熊本、そして決勝大会の岡山まで、約2週間遠征しっぱなし。
決勝リーグまでのわずかな時間も休むことなく、大会に向けて調整していた。
疲れはあるが、この1次リーグの好調ぶり、そして1年間積み上げてきた自信を最後の決勝リーグにぶつけるだけだった。
しかし、決勝リーグは選手・スタッフ誰もが知らされていなかった驚きの展開だった。
研究され尽くされたであろう華麗なパスサッカーは捨て、なんとしっかり守ってカウンターを狙うという、誰も想像しなかった戦術をとったのだ。
その戦いをする為、同じ沖縄から九州リーグに参戦していた海邦銀行サッカークラブの新田選手をレンタル移籍で獲得。そして190cm以上ある、長身のブラジル人センターバック、ダシルバ選手をなんとセンターフォワードで起用したのだ。
この新田選手はPK職人と呼ばれた名プレヤーで、蹴る方ではなく、PKを試合中獲得するのがうまい選手なのだ。
というのも、身長が160cmに満たない体ではあるが、物凄いスピードと突破力があり、体格のいいDFが思わず深くタックルをすると、倒れてPKになってしまうというものなのだ。
つまり戦いかたはこうだ。
パスサッカーを捨て、引いてしっかり守り、相手を引き出し、空いた相手スペースにボールを蹴り込む。それをスピードのある新田選手がクロスをあげ、ダシルバ選手に合わせる。もしクロスまでたどり着かなくても、新田選手がゴール付近でPKもしくはFKを獲るという流れだ。(大まかに言うと)
この戦い方に驚いたのはやはり一番は対戦相手だろう。
元Jリーグ選手も多く、また監督をはじめ、旧読売サッカークラブ伝統のパスサッカーで育った選手達が多くいるチームが、まさか守ってカウンターという戦いかたをするとは誰も思わなかっただろう。
しかも、大事な戦いに前線を託されたのは、チーム1の得点王ではなく、DFとよそのチームの小さなFWなのだから。
しかし、この戦い方が功を奏した。
初戦、九州リーグで破れたロアッソ熊本をPK戦で破り、ジェフ千葉のアマチュアとは1−0で勝利、そして最後バンディオッセ神戸にもPK戦で勝利し、見事優勝したのである。
PK戦に備えこちらはしっかり準備をしていた。
その後J2FC岐阜に移籍することになる、GKの野田恭平は190cmを超える長身に加え、反応の速さとセービングが抜群で、PKにはかなりの自信を持っていた。
そんな彼の存在、そしてさらにPKやFKに定評のあるリカルド選手、そして試合中にそのPKを獲得できる新田選手、このPKひとつにとっても抜かりなく準備をしていた与那城ジョージ監督の手腕の勝利だった。
きっと今までパスサッカーをし、その中心にいながら最後ピッチに立てなかった悔しい思いをした選手もいただろう。
監督は、メンバー発表の前、そんな選手一人一人にこの戦いへの理解を求め説明した。
ピッチの中だけが戦いじゃない。全ての選手スタッフが、ピッチ内外、試合以外の時間もひとつになって戦う為、誰一人戦い方に疑問を持ったり、不満を口にしたりすることのないよう、チームマネジメントにも大きな力を使っただろう。
当時のFC琉球は、もちろんお金に余裕もなく、今年経験してまた来年昇格しよう!なんていう余裕は全くない。
敗退=解散
というくらい厳しい状況だった。
最短で昇格する目標を有言実行していくしか、信用してもらえるすべはなかった。
そんな背水の陣のチームだからこそ、プライドも何もかもすて、JFLに昇格することだけを目標に3試合、どんな小さな可能性も見落とさず、取り組んだことがよかったのだと思う。
そんな相手が何をしてくるか、どれほどの覚悟を持って戦ってくるかわからないこの大会。
試合の内容なんかじゃない。
勝てばいい。
そして負けたら、また全ては1からやり直し。
1年かけて戦っても、また来年このステージに戻ってこれる保証はない。
中心選手達も歳をとり、いい若手はチームを離れ、さらに勝ち上がっても、また前回負けた悪夢が良からぬことを想像させる。
そんな大きなプレッシャーがかかる大一番。
選手、スタッフ、サポーター、もうとにかくみんなが一丸になって戦えるのか?
小さな可能性も取りこぼさず準備をできるか?
自分のプレーで今までの全てを無駄にするかもしれないというプレッシャーに勝てるのか?
そんな困難を乗り越えたチームが今大会優勝する。
大会の結果を楽しみにしているし、それを乗り越えてピッチに立つ全ての選手にエールを送りたい。
宮城'亮'
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