大浴場に入り冷水を浴びると体も頭も幾分シャキッとした。宿は二階建てでそれなりに大きな構えといえるのだが、廊下やロビーでは誰ともすれ違うことがなく、夏をまだ先に控えたこの時期、宿泊者は少ないようだ。旅先で人との出会いがないのは少し寂しい気もするが、仕事で出張しているのだから仕方がない。静かな海辺の夜を味わうためにも、かえってこのほうがよいのだと考えることにした。
移動の計画を練ってさっさと寝るか、明日の朝も早い――。小さなちゃぶ台を隅に片付け、部屋の中央に敷いた布団に大の字になって考えていると、2階の窓の外、宿を取り囲む林のほうから一瞬、女性の甲高い叫びが風に乗って聞こえた気がした。
そのおよそ1時間後――。宿の1階ロビーには地元の警官数人が詰め、ひとりで夜勤をしていたフロント係が慌だしく対応に追われていた。
何か事件が発生したのだ。すると、さっきの女性の声は幻聴ではなかったのか!?私も2階からロビーに降り、様子をみに集まってきた5、6人の他の宿泊者と共に、警官とフロント係の会話に耳を傾けていると、おおよその状況が飲み込めてきた。通報者は中年の男性客。いま、フロント係と一緒に事情聴取されている禿頭でいかにも人の良さそうな男だ。彼によると、21時半過ぎに宿の駐車場に到着して車を停め、後部座席のドアから荷物を出すときに丁度、海へと傾斜していく林のなかから人がもめるような声が聞こえてきたのだという。
様子がおかしい、と思って聞いていると、やがて女性の叫び声がした。驚いて駐車場の外灯をたよりに、枯れ葉を踏みしめて20mほど林に入っていくと、女性の運動靴が片足分だけ落ちていたということだ。
怖くなったので、男が宿のフロントに駆け込んで事情を伝え、交番に通報してもらったのが夜10時過ぎ。状況を調べにきた警官が男に案内されて現場を調べたところ、靴が落ちていた林の更に奥へと進んだ窪みに、若い女性が体を「く」の字に曲げる格好で横たわっていた――。
内田康夫さんが描くルポライター兼名探偵・浅見光彦の取材旅行なら、たとえひなびた海べりの国民宿舎が舞台であっても、きっと何か事件が起きるのだろうな、とついつい妄想が膨らんでしまったが、現実には女性の叫びもなーんにも聞こえてこないし、ただ静かに夜が更けていくだけなので非常に退屈している。(平和なのはいいことだけど)
仕様がない、アホらしいからそろそろ寝るか。宿に誰もいなくて静かなのと、明日早くから仕事なのは本当です。では皆さん、いい夜を。
移動の計画を練ってさっさと寝るか、明日の朝も早い――。小さなちゃぶ台を隅に片付け、部屋の中央に敷いた布団に大の字になって考えていると、2階の窓の外、宿を取り囲む林のほうから一瞬、女性の甲高い叫びが風に乗って聞こえた気がした。
そのおよそ1時間後――。宿の1階ロビーには地元の警官数人が詰め、ひとりで夜勤をしていたフロント係が慌だしく対応に追われていた。
何か事件が発生したのだ。すると、さっきの女性の声は幻聴ではなかったのか!?私も2階からロビーに降り、様子をみに集まってきた5、6人の他の宿泊者と共に、警官とフロント係の会話に耳を傾けていると、おおよその状況が飲み込めてきた。通報者は中年の男性客。いま、フロント係と一緒に事情聴取されている禿頭でいかにも人の良さそうな男だ。彼によると、21時半過ぎに宿の駐車場に到着して車を停め、後部座席のドアから荷物を出すときに丁度、海へと傾斜していく林のなかから人がもめるような声が聞こえてきたのだという。
様子がおかしい、と思って聞いていると、やがて女性の叫び声がした。驚いて駐車場の外灯をたよりに、枯れ葉を踏みしめて20mほど林に入っていくと、女性の運動靴が片足分だけ落ちていたということだ。
怖くなったので、男が宿のフロントに駆け込んで事情を伝え、交番に通報してもらったのが夜10時過ぎ。状況を調べにきた警官が男に案内されて現場を調べたところ、靴が落ちていた林の更に奥へと進んだ窪みに、若い女性が体を「く」の字に曲げる格好で横たわっていた――。
内田康夫さんが描くルポライター兼名探偵・浅見光彦の取材旅行なら、たとえひなびた海べりの国民宿舎が舞台であっても、きっと何か事件が起きるのだろうな、とついつい妄想が膨らんでしまったが、現実には女性の叫びもなーんにも聞こえてこないし、ただ静かに夜が更けていくだけなので非常に退屈している。(平和なのはいいことだけど)
仕様がない、アホらしいからそろそろ寝るか。宿に誰もいなくて静かなのと、明日早くから仕事なのは本当です。では皆さん、いい夜を。