本日は佐々木基樹選手最期の試合を観ることができました。

……

20年ほど前、深夜のボクシングTV放送で
天上天下唯我独尊 と刻まれたガウンをまとい
髪を逆立てたギラギラした眼の佐々木基樹というメインイベンターを観た時。

《東から陽が昇り》


下馬評を覆し東洋太平洋のベルトを奪取した時。

《頭上高く輝き》


時代は流れ 若いボクサーに襷(たすき)をつなぐ。

《深みある夕焼け》



佐々木基樹というボクサーの作品

日の出から黄昏までその全てに
ありがとう

というのが一ファンの私の素直な気持ちです。


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今回対戦相手が

東日本新人王を獲り
逆三角形の日本人離れしたカラダ、
身体能力に優れた若きボクサー 石川元希選手と知った時

必ず観に行こうと感じました。



日本タイトルを狙う41歳が
ランキング上は格下で上昇気流に乗る24歳を敢えて選ぶ…

ベルトを獲る上ではなんのメリットもない。
こうやってリスクを取る佐々木基樹は本当は何を求めているのか。

本当にベルトなのか、
それとも本当はベルト以上に求めているものがあるのではないか?

だとしたらそれは何なのか。

一ファンの私は勝手ながらこんなふうに思いを巡らせていました。


"ナチュラルボーンの新鋭"
"高みを見つめ自らを適応させ築きあげた佐々木基樹"

のコントラスト。



こうしてリングの外からこんな風に
ああだこうだ言葉を連ねているだけの私にとって

「千の言葉よりひとつの事実」を求め
現場 リングにあがっている選手に私は敬意を抱いています。

事実が決して栄光を約束されたものとは限らない。

それは重々承知の上で
それでもなお心の芯から湧き上がるものを燃やすことの重み 尊さを感じました。



下馬評不利の時こそ
しぶとくわずかな隙から突破口を切り拓き
それを手繰り寄せるのが佐々木基樹選手です。

かつて東洋太平洋王者 レブ サンティリァンからベルトを奪取した試合を思い浮かびます。

開始直前 うつむき妙に静かに気配を殺していた佐々木選手が
ゴングが鳴ると同時に猛然とダッシュ、
サンティリァンへの猛攻。

奇襲成功せり

これで格上から主導権を握りみごとチャンピオンに。

静と動。
インテリジェンスと野性味

この振り子の幅の広さ これが懐の深さであり魅力です。

かつてとは立場状況が異なる。
それでもなお…

ゆえに2017年5月6日のこの試合は
自分の目に刻もうと感じました。

ついにゴングが鳴りました。

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試合を観てなぜか「牛」という詩が浮かびました。

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高村光太郎 「 牛  」より引用


牛はのろのろと歩く

牛は野でも山でも道でも川でも

自分の行きたいところへは まっすぐに行く

牛はただでは飛ばない 

ただでは躍らない 

がちりがちりと

牛は砂を掘り土を掘り石をはねとばし 

やっぱり牛はのろのろと歩く

牛は急ぐことをしない 

牛は力いっぱい地面を頼って行く 

自分を載せている自然の力を信じきって行く 

ひと足ひと足牛は自分の力を味わって行く

ふみ出す足は必然だ

うわの空のことではない 

是が非でも出さないではたまらない足を出す牛だ 

出したが最後 牛は後へはかえらない 

そして やっぱり牛はのろのろと歩く

牛はがむしゃらではない 

けれどかなりがむしゃらだ 

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後編へつづく