凍てつく月が、丸まった背中を切り裂き
凍るような風が、細めたまなこを凍らす
切り裂かれた空気がすくめた首に巻き付き
前を歩く人逹の背中が無関心にせせら笑う

温かい太陽が腐り凍っていた心を溶かし
爽やかな風が異臭を運ぶ
生気を帯びた空気が体を蝕み
花びらの中で無関心に人が噎せ笑う

灼熱の太陽がのどを焼ききり
熱風が卑しい汗を誘う
蒸しあげられた空気が体の中から叫ぶ
すれ違う人達の横顔が無関心に嘲り笑う

己が正しく
他は間違っている

君達が正しく
我が間違っている

己は許される
君達は受け入れろ

何も残らないように
何も残さないように

何も残らない
枯れ葉とともに
宙に舞う
冬の朝

鼻につんとした空気のなかで

必死になって梢にしがみつく

数枚の葉

一心不乱にもがきながらそれでも梢から離れない

あと一風

あと二風

まだ踊ってる

まだ歌ってる

まだ叫んでる

冷たい風が

凍るような風が

季節外れの枯れ葉を

都会の片隅に寄せ集める

何も語らなかった

何も語らないだろう

人の命日

まだ

まだ笑ってる数枚の葉を見上げているのか

寒いな
ひとり生きる母

家族をもった妹や

出来の悪い兄を思いながら
近所のひとと交わりながら
遠くの友人と語り合いながら

喜び、笑い、悩み、悲しみ唄いながら歩いてる

ひとり


喜びを楽しみあい、悲しみを分かちあい、苦しみを励ましあい、笑いを語り合うのは、いつもそばにいる人でなくてもいい

今はいないひとでもいい

悲しいことを心から悲しんで

苦しいことを心からくるしんで

楽しいことを心からわらえる

いつも変わらず

いつも変わらず

そんなひとになりたい

そんなひとでありたい