※ 記事の更新がないときは、過去記事、もしくは、右下のツイッターに科学ニュースなどを載せていますので、そちらをお楽しみください。









寒いですね

まるで真冬に逆戻り

昨日今日と雪の大阪南部です


皆様のところは、いかがですか?





先日、Yahoo! でも

取り上げられていたニュース↓↓↓↓↓

「認知症の謎が1つ解明!80歳を超えても認知症にかからない人の特徴とは?」



80歳以上で認知脳力が20-30歳も若い

「スーパーお年寄り」の脳は

どう違うのか?を調べた研究が

報告されたということで、


結果から言いますと、

1)まず、先行研究で分かっていた、
  スーパーお年寄りの脳は、
  脳の表面から少し深い層にある
  前帯状皮質が健康な50-60歳の脳
  よりも厚いということを確認

その帯状皮質のニューロンを詳しく調べると、

2)アルツハイマー病でよく見られる、
  神経原線維変化があまりなかった

3)でも、ニューロンの大きさや数には
  大した違いはなかった

4)興味深い結果として、
  「フォン・エコノモ」ニューロンが
  非常に多かった

ということです


ちなみに、

「フォン・エコノモ」ニューロン
(von Economo neurons)



1929年に、フォン・エコノモ博士

発見したニューロンです


紡錘ニューロン(Spindle neurons)

とも呼ばれ、細胞体が紡錘形で

普通のニューロンでは多数伸びている

樹状突起が1本しかないのが特徴


前帯状回皮質、島皮質、背外側前頭前野

という限られた脳領域だけにあります


まだ機能はよく分かっていません



ということで、

スーパーお年寄りは、

前帯状皮質が厚くて、

フォン・エコノモニューロンが多い

という特徴があることは分かりました


しかし、

それがどうしてなのか、

認知機能にどう関係しているのか、

といったことは、

よく分からないそうです




ところで、

その研究成果の他に気になったことが。。


それは、

私たちが情報に当たる姿勢に関わります


Yahoo!のニュースの元記事を見ると

この研究論文が掲載された学術雑誌が

 アメリカの神経学会誌
  Journal of Neurolog

となっております


「Neurolog」って何?(笑)


神経科学者なら、

Journal of Neurology

のことだろうなと察しはつきます


そのニュースの下の方には、

#####
アメリカの神経学会誌JournalofNeurologに発表されました。(米abcNEWS2月4日のネット配信記事より)
http://abcnews.go.com/Health/brains-superagers-peoples/story?id=28724056
#####



ここでも「Neurolog」になっていて

of の前後のスペースがないのも

不自然ですが、まあよいとして、

どうやら、この記事はABC NEWS を

参照しているようですので、

早速そちらに飛んでみましょう



How the Brains of 'SuperAgers' Are Different



やっぱり、

Journal of Neurology に

掲載された論文だと書いてあります


日本の記事では、最後の「y」まで

ちゃんとコピペしなかったのですね



どれどれ、

Journal of Neurology で

著者が Chanzig Geula の論文を

検索してみますか。。



んん? 見当たりません



いろいろ調べていくうち、

原論文は Journal of Neuroscience

に掲載されていることが判明


Gefen T, Peterson M, Papastefan ST, Martersteck A, Whitney K, Rademaker A, Bigio EH, Weintraub S, Rogalski E, Mesulam MM, Geula C.
"Morphometric and histologic substrates of cingulate integrity in elders with exceptional memory capacity."
Journal of Neuroscience 35(4): 1781-1791.
doi: 10.1523/JNEUROSCI.2998-14.2015.



なんと

ABC NEWS からして間違っていたとは




今回のケースは一例に過ぎません


日本では、

海外の記事を訳しただけとか

コピペミスも割と見受けます


原論文や元データといった

一次情報に当たらないメディアは

いかがなものかと


揚げ足取りのようにも見えますが、

出来るだけ元の情報にあたって

正しく伝えるのがメディアの役割



原論文を読み込むのは

専門家でないと難しいですし

会員でないと、そもそも論文自体に

アクセスできないことも多々あります


そこまでしなくても

論文には要約(Abstract)という

論文の内容を簡単にまとめた文章があり

これは無料公開がほとんど


ですから、せめて要約くらいは

原論文で読んで欲しいものです




例えば、今回のニュースに関しては

以下の良記事を見付けました


「スーパーお年寄り」なぜボケないか、背景に「フォン・エコノモ神経細胞」?

ボケない人を追跡した「コホート研究」 西川伸一 THE CLUB




文献情報も、正しく

「J Neurosci.」となっております


記事の内容から、

ちゃんと元の論文を

読んでおられる様子ですし、

あまり知られていない、

フォン・エコノモ ニューロン

についても解説を加えておられます



このような記事を書かれる方は

信頼できますね




専門家でない個々人が

情報の信頼性を見極めるのは

そう簡単ではありません


信頼できる人つながりで

信頼できる情報源を選んでいく

というのが現実的な路線かと思います




(おしまい)




文:生塩研一




お読みいただきまして、ありがとうございました。
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