※ 記事の更新がないときは、過去記事、もしくは、右下のツイッターに科学ニュースなどを載せていますので、そちらをお楽しみください。
前回は、
脳内で特に深い所から記録した
ニューロン活動が、どこにあった
ニューロンなのかをを調べる方法と、
記録したい灰白質(細胞体の集合体)が
小さい所はニューロン活動の記録自体が
難しくて、「前障」がその例である、
という話を書きました
拙ブログ『脳のニューロンの位置はどうやって確認するか』
では、その前障は
一体、脳のどこにあるでしょうか?
下図は脳を右から左に切った断面で
色の濃いところは細胞体が多くて灰白質、
白いところは神経線維が多くて白質
とそれぞれ呼ばれます

(前障)
前障は赤矢印の先にある青色の領域です
ちなみに、
その右にあるのは大脳皮質が奥まで
入り込んだ、島(トウ)という灰白質で、
左にあるのは被殻や淡蒼球などの
大脳基底核です
脳の表面を覆う大脳皮質に比べて
前障がいかに薄いかがお分かり
いただけるかと思います
先日、この前障を電気刺激すると
意識を失ってしまったという論文が
発表されました
Koubeissia MZ, et al. (2014)
"Electrical stimulation of a small brain area reversibly disrupts consciousness"
Epilepsy & Behavior 37: 32-35.
1例だけの症例報告なので、
Brief Communication (短報)の扱い
となっています
脳に電気刺激をするのは
1900年代前半から試されていまして
脳外科医のワイルダー・ペンフィールドが
てんかん患者の手術で行っていたのが
有名で、以前にこのブログでも
触れたことがありますね
拙ブログ『脳に微弱電流、で記憶が蘇る?』
脳への電気刺激には
「調べる」と「治療する」の2つの
目的があります
前述のペンフィールドは
調べるために使っていました
てんかんは脳の異常興奮で
脳の特定の部分に異常が起きて
それが他の脳領域に広がっていきます
その最初の所を焦点と言いまして
ペンフィールドはてんかんの焦点を
探すために脳のいろいろな所を
電気刺激し、その過程で、記憶に関わる
脳領域を発見したのでした
調べる、という意味では
動物を使った脳科学実験でも脳への
電気刺激はよく使います
脳の運動領域は場所によって担当する
筋肉が決まっているのですが、
それを調べるマッピングという作業では
皮質内微小電気刺激 ICMS
(IntraCortical MicroStimulation)
という微弱な電流刺激で身体のどこが
動くかを調べて脳地図を作っていきます
「治療する」という目的では
パーキンソン病の脳深部刺激療法などが
ありますが、またの機会にでも。。
上記の論文では
難治性てんかんをもつ54歳の女性が
前障への電気刺激で意識を失って
しまったというのです
とりあえず、メジャーどころとは言えない
前障ですが、意識との関連は以前から
指摘されていました
例えば、
2005年のクリックとコッホの論文
Francis C. Crick & Christof Koch (2005)
"What is the function of the claustrum"
Phil Trans R Soc B 360: 1271-1279.
クリックというのは、あのDNAが
二重らせん構造をしているのを発見した
フランシス・クリックです
1990年頃から、コッホと共に
意識の問題に取り組んでいました
先のクリックとコッホの review 論文には、
前障は、小さい脳領域だが
大脳皮質のほとんど全ての領域と
情報のやり取りをする重要な中継地点で
知覚が意識に上ることに関わっている
との見解がまとめてあります
先日、発表されたのは、
前障を実際に電気刺激をしてみたという
初めての論文でした
前障と意識の研究も目が離せませんね!
(おしまい)
文:生塩研一
お読みいただきまして、ありがとうございました。
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