前回は、
音楽に全く快感を覚えないグループの
被験者は、
食べ物、性、お金、運動、薬物に対する
快感の強さは平均的なのに
音楽に対してだけ快感を感じず、
不気味さについても感じにくい
という被験者本人の主観を元にした
実験結果を紹介しました
拙ブログ『音楽で感情が全く動かない人がいるなんて!(2)』
ただ、
被験者本人に、
「どうでしたか?」と聞くのは
程度の評価は人それぞれですし、
そもそも思ってもいないことを
回答することもあり得るわけです
では、どうすればいいか?
ということで、
脳の活動はウソをつかないだろう
との観点から
脳の活動を調べましょう
というアプローチが
ニューロマーケティングです
ただ、
脳の活動を調べるのは簡単ではありません
そこで使われるのが
心拍数、血圧、発汗などの、生理反応
緊張したり、怖かったりすると
心臓がドキドキしますね
ドキドキしているときには
心拍数も上がっています
緊張しているときには
自分でも分かるくらいに
心拍数は上がっていますが、
いろいろな心理状態で
意識に上らない程度に微妙に
変化させて調整しています
この調整役をになっているのが
自律神経系で
その中枢は脳の深い所にあります
人に質問されたときに
わざとウソの答えを言うのは
それほど難しくありませんが、
心拍数や発汗を思い通りに変えるのは
難しいです
というか、普通はできません
ですから、
脳や生理反応を調べると
本当の情報が得られるということになります
実際は
そんなに簡単に情報は得られませんが
考え方としてはそういうことです
今回の論文では
皮膚コンダクタンスと心拍数
を評価しています
コンダクタンスというのは
電気伝導度のことですから
皮膚上での電気の流れやすさを調べます
ドキッとしたりすると
交感神経が優位になって
精神的な発汗をします
発汗、つまり、汗をかくと
汗にはイオンが含まれているので
皮膚上で電気が流れやすくなります
ウソ発見器でも使われますね
自律神経系の反応ですから
自分で調節できないので
心的状態を評価するのに適しています
実際には
左手の人差し指と中指で測ったようです
さて、
実験の結果はどうだったでしょうか?
BMRQで
音楽に全く快感を覚えないグループだけ
不気味だと評価した曲のときの
皮膚コンダクタンスが変化しなかった
つまり、
音楽の影響が全くなかった
というのです
低い心地よさや高い心地よさを
感じた曲でも
音楽に全く快感を覚えないグループだけ
反応が違っていたとのことです
主観的な回答は
ウソではなかったのですね
ひょっとして、
音楽に全く快感を覚えないグループに
属する人たちは
報酬に関する感覚そのものが
鈍いのでしょうか?
これを検証するために
お金がもらえる課題でも実験を行なって
生理反応を調べています
この課題では、早く反応しないと
お金がもらえなかったり
支払わなければならなかったりします
実験の結果、
音楽に全く快感を覚えないグループは
音楽で感情が動くグループと
ほとんど違わなかったそうです
つまり、
お金という報酬に対する反応は
変わらないということですので、
音楽に対してだけ
報酬という感覚や快感が得られない
ということになります
音楽で心が全く動かない人がいるなんて!
音楽好きな私には、とっても不思議
ついでに、
失音楽症(amusia)というのは
聴覚能力自体に問題はないけれど
音楽が分からない障害で、
聴覚的な言語理解も伴うケースと
言語はOKなのに音楽だけが分からない
というケースがあります
また、
音楽嗜好症(musicophilia)というのは
音楽に取り憑かれた感じですね
以下の本に詳しいです
オリヴァー・サックス『音楽嗜好症-ミュージコフィリア-―脳神経科医と音楽に憑かれた人々』
(おしまい)
文:生塩研一
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