前回、
プライマーなる先行刺激が
直後の行動にまで影響するという
プライミングの例をご紹介しました
拙ブログ『プライミング効果は行動にも現れる』
今回は、その逆で
直前の行動が認知に影響する
ということを示した実験です
Mussweiler T (2006)
"Doing Is for Thinking"
Psychological Science 17(1): 17-21.
この論文でも3つの実験を示しています
実験の内容に入る前に
実験の中で被験者に評価してもらった
リッカート尺度(Likert scale)
について、簡単に書いておきます
これ、
リカートと読んでいいと思うのですが
日本語表記では
「リッカート」とするようです
要は、アンケートでよくみる
悪い、やや悪い、普通、やや良い、良い
みたいな主観的評価のことです
上記の例は5段階ですが
この論文では、9段階を採用しています
よくあてはまるのは、9点
全くあてはまらないのは、1点
というわけです
さて、どんな実験だったでしょうか?
【実験1】
被験者:20名の大学生
被験者に太った人の動きをしてもらうため
ライフジャケットを着て
手足に重りをつけて、
実際に泳いだり歩いたりしてもらいます
その後、
Beate という女性のことが
書かれた文章を読みます
その文章には
太ったイメージの言葉もあれば
そうでない言葉もあり、全体としては
バイアスがかかっていないように
なっています
そして、
その Beate さんについての印象を
評価してもらうのですが、
太った人をイメージするような表現と
バイアスのない表現に対して、
リッカート尺度(Likert scale)
で答えてもらいます
太った人をイメージする言葉は
フレンドリー、社交的、臆病、
不健康、身なりの良い、怠惰な、
のろのろした、の7つ
バイアスのない言葉は
創造的な、嫉妬、忘れやすいなど8つ
これらの言葉をリッカート尺度で
評価してもらったところ、
太った人の動きをした被験者は
太った人をイメージする言葉に
高い点数をつけることが分かりました
比較の対照として
ライフジャケットや重りを付けずに
動きをしてもらったグループでは
そのような偏りはなかったそうです
著者は、
太った人の動きをすることで
そのイメージが活性化されたのでは
と考察しています
【実験2】
被験者:37名の大学生
実験1と似ていますが、
今度は、高齢者の動きをしてもらうため
エアロバイク(スポーツジムの自転車)を
ゆっくり漕いでもらいます
ペースとしては、1分間に30回転
2秒で1回転ですから、遅いですね
比較のグループには
1分間に80回転で漕いでもらいます
そして、
バイアスのない女性についての
記述を読んでもらって
その人に対する印象をリッカート尺度で
答えてもらいます
すると、
自転車をゆっくり漕いだグループは
高齢者をイメージする項目で
高得点、つまり、
よりあてはまるように答えました
実験1と同様に
高齢者のイメージが活性化したため
と考察されています
【実験3】
被験者、33名の大学生
1分間に30歩でゆっくり歩くグループと
1分間に90歩で普通に歩くグループに分け
5分間歩いてもらいます
歩くペースは
録音したメトロノームの音に合わせる形
その後、
語彙判断課題(Lexical Decision Task)を
してもらいます
この課題では
呈示された文字列が
語彙として存在する単語か否かを
素早く判断します
呈示される40個の文字列のうち
24個は語彙になく
8個は高齢者をイメージする単語
忘れやすい、さびしい、上の空、
教会、古い、賢い、悲しい、編み物で、
8個はバイアスのない単語
不明瞭、地下、強盗、権利、
でこぼこ、混乱、分離、気が滅入る
これらの単語は、先行研究で
その効果が確かめられた単語のようです
実験の結果、
高齢者をイメージする単語に対しては
普通のペースのグループは
0.7秒だったのに、
ゆっくり歩いたグループは
0.6秒と速く回答したのです
ゆっくり歩いたことで
高齢者というイメージが喚起され
関連した言葉に対する反応が
速くなったのだと考えられます
直前の行動がプライマーとなって
それに関するイメージが
ポップアップすることによって
認知、つまり、考え方が影響を受ける、
ということを示した実験だったのですね
真似をして動いていれば
それっぽい考え方になっていく
ということですから、
案じて止まっているのではなく
どんどん動くといいですね
(おしまい)
文:生塩研一
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