前回は、
今回ご紹介する論文の前振りとして
記憶に関連した脳の重要な機能、
というか、性質とか、クセの一つに
「連想」があるということ書きました
拙ブログ『連想と側頭葉(1)』
このところ
東大・宮下研の論文ばかりを
取り上げていまして、まるで
宮下研の広報係と化したような私ですが
素晴らしい研究が多いので
ある意味、仕方ありません
で、
今回も宮下研からの Nature 論文です
Sakai K & Miyashita Y (1991)
"Neural organization for the long-term memory of paired associates"
Nature 354: 152-155.
実験にはサルを使い
このところご紹介している論文と
同様に複雑な図形を見せます
この論文では
複雑な図形を2つペアにして
ペア12組(計24枚)を記憶させます
ここでは、
フラクタル図形ではなく
フーリエ記述子(Fourier descriptors)
という手法で図形を作っています
詳しいことはいいとして
以前にフラクタル図形を使ったのと同様に
サルが見たことのない図形を
簡単にたくさん作ることができる
ということです
最初にその12組の中から選んだ
サンプル図形を1秒間ほど見せます
そして、4秒間待たせます
この期間を、遅延期間と言います
その後、
サンプル図形とペアで覚えた図形、
それから、ペアではない図形の
2つを並べて表示し
ペアで覚えた図形を選ぶと
正解とします
サルはジュースをもらえます
この課題が充分こなせるように
なったところで
ニューロン活動の記録実験に入ります
頭蓋骨を取って針電極を刺入する
ユニットレコーティングです
参考:拙ブログ『脳の活動はどうやって調べるの?(1)細胞外記録法』
2頭のサルから
577個のニューロン活動を記録
まず、
サンプル図形を見せている間の
ニューロン活動を解析したところ、
91個のニューロンが
特定の図形に対して強く反応していました
それを詳しく調べると
その91個のニューロンのうち
32個は特定の1つの図形にのみ反応し
残りの59個は2つ以上の図形に反応
2つ以上の中でも
2つだけの図形に反応したニューロンが
最も多かったとのこと
つまり、
トレーニング期間に訓練した
連想記憶が成立し
2つの図形をペアで想起させる
ニューロンが側頭葉にあったのですね
そして、今度は
サンプル図形を見せたあとの
遅延期間でのニューロン活動を解析
すると、
面白い反応を示すニューロンが
見付かりました
トレーニングでペアになった2つの
図形に反応するニューロンなのですが、
片方の図形がサンプル図形として
表示されたときは強く反応し
その後の遅延期間でも
ある程度強い反応が持続
もう一方の図形がサンプル図形として
表示されたときは
あまり強くは反応しないのに
図形が消えて遅延期間に入ると
徐々に活動が強くなったのです
これは、まさにそのとき
連想でペアとなる図形を思い出している
過程の活動であると考えられます
著者らは論文で
ペア想起ニューロンと呼んでいます
ペア想起ニューロンは
サンプル図形を表示している間より
それが消えた後の遅延期間での
反応が強いのですが、
先の91個ニューロンのうち
10個がこのペア想起ニューロンだった
とのこと
何かを見て、他のことが思い浮かぶ
という連想は、この側頭葉の
ペア想起ニューロンが引き起こしている
と言えるでしょう
連想にガッチリ関わるニューロンが
側頭葉(腹側部)にあったという
お話でした
(おしまい)
文:生塩研一
お読みいただきまして、ありがとうございました。
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