前回は今回の下準備も兼ねて
視覚関係のことを書きました
『視覚伝導路、光内因性信号イメージング(OISI)』
先日、
顔などの認識をする高次視覚野の
IT野が、どのようなハード的脳構造
になっているのか
を調べた論文が発表されました
これまでは
fMRI や OISI による計測で
細かな図形特徴は直径0.5mmの
コラム構造で、
より広いカテゴリー情報は
同じ高次視覚野の直径5mmの領域で
処理されているということは
分かっていました
しかし、その2つの構造が
どういう関係にあるかは
よくわかっていませんでした
そこで、
電極を刺す細胞外記録で
きっちり見ましょうという発想です
Sato T, et al., (2013)
"Object representation in inferior temporal cortex is organized hierarchically in a mosaic-like structure".
Journal of Neuroscience 33(42): 16642-16656.
doi: 10.1523/JNEUROSCI.5557-12.2013
理化学研究所のプレスリリース
「高度な物体認識を担う新たな脳の構造を発見 ―高次視覚野はモザイク画のように構成されている―」
実験では3頭をサルを使っています
MRIで脳の構造を事前に調べておいて
内径18mmのチタン製の窓枠を
IT野上の頭蓋骨に設置
計測する脳部位の頭蓋骨と
脳を覆う硬膜を
手術で取って、脳を露出
露出した脳表面を保護するため
シリコンオイルで満たし
チタン製の窓枠をガラスでカバー
視覚刺激(写真や絵)は
計測半球の反対側の片眼に
2秒間与えます
視覚刺激は7カテゴリー
正常な顔
スクランブルした顔
(福笑いのような感じ)
サルの手
サルの体全体
他の動物の体全体
食べ物
人工物
視覚刺激の総枚数は 104枚
実際に実験で見せたのは
各セッションで25枚
細胞外記録法は
細い針電極を脳内に差し込んで
ニューロンのすぐそばで計測するので
個々のニューロンの活動を
きっちり調べられます
ご参考:拙ブログ
『脳の活動はどうやって調べるの?(1)細胞外記録法』
今回の論文では
人工的な硬膜として
シリコンラバーを脳表面に
乗せた状態で、
タングステン電極3本を束にして
差し込んでいます
論文にはFHCの型番まで
ちゃんと書いてあります
いろいろなカテゴリーの写真や絵を
見せながら、IT野のニューロン活動を
詳細に調べた結果、
同じカテゴリに属する
細かな図形特徴を
処理するコラム構造が集まって、
カテゴリー処理の領域を形成
していることが分かりました
例えば、
顔カテゴリーの領域のニューロンは
体、食べ物、人工物には
あまり反応しませんが、
ニューロンによっては
ヒトに強く反応するものがあったり
また別のニューロンは
サルに強く反応したり
だったとのこと

(理研のプレスリリースより)
こう書くと
簡単そうに見えるかもしれませんが、
実際にはかなり手間のかかる実験です
fMRIなどのイメージングの論文は
増えましたが、この論文のような
きっちり調べる細胞外記録の論文が
もっと増えて欲しいものです
(おしまい)
文:生塩研一
お読みいただきまして、ありがとうございました。
コメントもお待ちしています。お気軽にどうぞ~!
応援してくださる方は、下のバナーをクリック

ランキングサイトが開いたらOK!

自然科学 ブログランキングへ

にほんブログ村
Facebook の「いいね!」も嬉しいです!
Twitterもやってます
