前回は
ボツリヌス毒素が世界最強で
その作用のこと、
それから、最近
これまで以上に強いボツリヌス毒素が
発見されたと
いうところまででした
『世界最強のボツリヌス毒素(1) ~ 神経毒からニューロンの機能をみる(13)』
では、その続きを
新種のボツリヌス毒素。
その致死量は、成人で
0.002 mg(2ng)
これまで最強と言われた
ボツリヌス毒素の 30倍の強さです
ボツリヌス毒素は生物兵器としても
開発され、第2次世界大戦の頃から
精製法が確立しています
1995年、イラクは
生物兵器として保有する
約2万リットルのボツリヌス毒素を
廃棄しています
このような経緯もあり
先般、発見された世界最強で
新種のボツリヌス毒素に関する論文は
セキュリティの問題から
「当面、発表を控える」
という事態になっています
ボツリヌス「菌」は芽胞となって
高温に耐えられますが、
ボツリヌス「毒素」は
加熱すると壊れて無毒化されます
ボツリヌス菌の不活化には
100℃で6時間とか
芽胞だと120℃で4分間の加熱必要
しかし、ボツリヌス毒素は
100℃で1-2分の加熱で無毒に
毒素は加熱しても
無毒化できないケースが多い中、
ボツリヌス毒素は
それ自体がたんぱく質であるお陰で
最強の毒素であるにも関わらず
加熱で無毒化できます
不幸中の幸いと言うべきでしょう
また、
人工呼吸器による呼吸の補助や
血清により
数週間から数ヶ月で回復するようです
それから、
ハチミツにボツリヌス菌の芽胞が
含まれていることがあります

成人では、胃酸で殺菌されたり
腸内細菌叢により
繁殖したりしません
しかし、1歳未満の乳児では
消化管が短く胃酸による殺菌が
不充分であったり
腸内細菌叢が未発達だったりするので、
不活性な芽胞が発芽して
ボツリヌス毒素を出して
中毒症状を引き起こします
これを乳児ボツリヌス症といいます
乳児ボツリヌス症では
便秘などの消化器症状や
全身脱力で首の据わりが悪くなります
ただ、致死率は低いようです
ハチミツの他にも
コーンシロップや野菜ジュースを
避けるのがよいとされます
この、世界最強とされる
ボツリヌス毒素ではありますが、
リハビリ、治療、シワ取り
などに利用されていたりもします
脳卒中の後遺症で多くあるのが
痙縮という、筋肉の過緊張で
手足が突っ張った状態になる症状です
痙縮した筋肉に
薄めたボツリヌス毒素を注入すると
筋肉が弛緩して
日常生活での不便さ解消や
リハビリに取り組みやすくなるなど
効果がみられるようです
ジストニアという、
中枢神経系の障害によって
筋肉がずっと収縮してしまう症状にも
筋緊張を和らげる効果があります
また、顔のシワは
表情筋の収縮によるものもあり
薄めたボツリヌス毒素を
注入することで表情筋を弛緩させ
シワを取ります
世界最強と言われながら
身近に利用されているという
ボツリヌス毒素
何だか、不思議な感じですね
(つづく)
文:生塩研一
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