記憶には
手続き記憶 と 陳述記憶 があります
手続き記憶とは
ピアノを弾いたり、自転車に乗ったり
身体で表現できる記憶で、
陳述記憶とは
言葉で表現できる記憶です
スポーツで言うと、
実際にやって身体で覚える
という割と普通のやり方が
手続き記憶そのもの
中には、指導書を読んだりして
頭で分かってから身体を動かす方が
上達しやすいという、
いわゆる理論派もおられますね
これは、陳述記憶が優位で
言葉で理解したものを
運動に変換しているわけです
陳述記憶は、さらに
短期記憶 と 長期記憶 に分けられ、
短期記憶は、数分から数時間で
作業記憶もこれに含まれます
長期記憶は年単位の固定された記憶で
エピソード記憶 と 意味記憶
があります
エピソード記憶は
日常的なことを時間の流れとで
覚えること
意味記憶は
勉強での暗記と思ってください
記憶と脳の話題でよく出てくるのが
患者HM(1926年 - 2008年)
HMさんは難治性てんかんの患者で
子どもの頃から苦しんでいました
このてんかんの治療のため
27歳のとき、脳の手術を受けます
手術により、てんかんの痙攣は
かなり改善されました
知能や言語能力も正常で
昔のことも覚えています
しかし、思わぬ障がいも残りました
それは、
新しく記憶できないこと
少しの間だけ覚えておく短期記憶や
新しい身体の動きを覚える手続き記憶
は OK
しかし、
新しい記憶はちょっと時間が経つと
すぐに忘れてしまうのです
これを前向性健忘と言います
HMさんが手術で切除された脳領域は
内側側頭葉の一部である、
海馬、海馬傍回、扁桃体
海馬はてんかん発作で閾値が低い
つまり、発作を起こしやすい所で
ほとんどのてんかんは海馬が焦点に
なっているため
海馬が切除されたのです

海馬
脳の機能を調べるのに
実験動物では、特定の脳領域を
切除したりすることがありますが
ヒトではそういったことはできません
HMさんのように治療の過程で
やむを得ず切除した場合に
患者さんの協力を得て
ようやく知見が得られます
HMさんは本名非公開で
いろいろな実験に参加し
記憶障害などの認知科学に
大いに貢献されました
2008年に82歳で亡くなられています
新聞の追悼記事では、お名前として
Henry Gustav Molaison
と記載されています
HMさんが前向性健忘を示したことで
海馬は新しい記憶に深く関係する
ことが分かりました
海馬のすぐ近くに
海馬傍回という大脳皮質領域があり
海馬と密な神経連絡をとっています
そして、その海馬傍回には
たくさんの脳領域から入力があり
また、ほとんど全ての脳領域に
出力していることから
海馬は、
全ての感覚や運動の情報を受け取り
処理していると考えられます
明日は記憶の分子メカニズムとして
シナプスの長期増強(LTP)
について書いてみます
(つづく)
文:生塩研一
お読みいただきまして、ありがとうございました。
コメントもお待ちしています。お気軽にどうぞ~!
応援してくださる方は、下のバナーをクリック

ランキングサイトが開いたらOK!

自然科学 ブログランキングへ

にほんブログ村
Facebook の「いいね!」も嬉しいです!
Twitterもやってます
