ドーパミンの話、3回目です

とりあえずの最終回


1回目
『ドーパミン、出てますか?』

2回目
『ドーパミン神経は不快なときにも反応する』




ドーパミン神経は

報酬だけでなく、嫌なことや

ビックリしたことにも反応することが

分かってきたのでしたね




ドーパミンは、前頭前野の機能との

関連が深いことも知られていて、

神経毒でドーパミン神経を破壊すると

working memory 課題が

できなくなる

と1979年には報告されています

Brozoski TJ, et al., (1979)
"Cognitive deficit caused by regional depletion of dopamine in prefrontal cortex of rhesus monkey."
Science 205: 929–932




ここで、

working memory というのは

作業記憶のことで、

話している間にはその話題を

覚えているとか、

電話をかけるために番号を覚えるとか、

少しの間だけ覚えておくことで

前頭前野がその機能を担っていると

考えられています





最近、

松本正幸教授らによる

ドーパミン神経に関する

新たな論文が発表されました



京都大学のプレスリリース

「認知機能と動機付け機能を支える二つのドーパミン神経システム」



Matsumoto M & Takada M (2013)
"Distinct Representations of Cognitive and Motivational Signals in Midbrain Dopamine Neurons"
Neuron





著者が2名だけで、お二人とも教授

という、やや珍しいパターン



第1著者が、前回ご紹介した

松本正幸教授(筑波大)


Nature 論文を2本も出されている

大変優秀な若い教授なのですね



もうお一方は、私も少し面識のある

京大の高田昌彦教授



共著者が少ないのもいいですね


あまり関係ないのに

ズラズラ連ねるのはいただけません




さて、実験では

ニホンザルが2頭参加しています




遅延見本合わせ(DMS)課題
Delayed-Matching-to-Sample task

という形式の課題を与えています



サンプルの図形を見せて

少し時間をあけて

それと違う図形もを混ぜた状態で

サンプルの図形を見付けます



実際には、

少し傾いた短い棒が画面に表示され

その角度を覚えて

少し間があった後、

その角度と同じ棒と

違う角度の棒が数本同時に表示され

同じ角度の棒に視線を向けると

正解となり、ジュースをもらえます



棒の傾きを覚えるという

working memory 課題になっています



各課題の最初には

固視点(fixation point)が示され

それが赤い四角だったらジュースが多く

青い四角だったら少ないことが

分かるようになっています



この課題をやってもらっている間の

ドーパミン神経の活動を

ユニットレコーディング法で

調べています




その作業記憶が関わっているかどうか

を調べるため、

作業記憶が必要のない課題も用意



このような課題を、統制課題

英語では control task といいます



今回の実験の統制課題では

最初の固視点は作業記憶課題と同じで

そのときの報酬の量を教えます



また、作業記憶課題と同様に

傾いた短い棒は示されますが、

その傾きを覚える必要はなく

複数ある図形の中で仲間はずれを

探せばよいことになっています



つまり、統制課題では

報酬の量の情報だけ与えられています




実験の結果、

作業記憶の課題だけで活発になった

ドーパミン神経が

黒質緻密部の背側部という

限られた所で見付かりました



他の場所のドーパミン神経は

報酬に関する活動だけだったそうです



それから、

間違って報酬がなかったときだけ

活動が活発になったドーパミン神経も

あったとのこと




ドーパミン神経が

記憶にも関わっているということが

具体的な神経活動として確認できた

ということと、それらがどこにあるかが

はっきりと分かったということです





驚くときも、記憶するときも

ドーパミンが出るということは、

驚きも、記憶も、

本能的なレベルでは快楽なのでしょう



これらの関係を上手く工夫して

勉強も捗る、、といいのですが




(おしまい)







文:生塩研一




お読みいただきまして、ありがとうございました。
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