「12年間植物状態の患者と脳スキャンを使って会話することに成功(カナダ研究)」
との刺激的なニュースがありましたね
論文
Naci L & Owen AM (2013)
Making Every Word Count for Nonresponsive Patients
JAMA Neurol.
doi:10.1001/jamaneurol.2013.3686.
植物状態というのは俗称で
医学的には
「遷延性意識障害」と言います
日本脳神経外科学会の定義では
①自力で移動できない
②自力で食べることができない
③大小便を失禁
④目はものを追うが認識はできない
⑤簡単な命令には応ずることもあるが、それ以上の意思の疎通ができない、
⑥声は出すが意味のある発語はできない
以上の状態が
3か月以上継続していること
とされています
寝たきりですが
目は開いていて、声も出すが
周りとはほとんど関係ない状態です
脳の機能としては
呼吸や循環などの生命維持機能を担う
脳幹の機能は残っていますが、
大脳皮質など高次機能が失われた状態
では、
脳死とどう違うのでしょうか?
脳死というのは
上記の機能喪失に加えて
脳幹の機能も失われた状態です
脳幹は不可逆的に機能喪失していてい
回復しません
実験の被験者は、植物状態が2名で
最小意識状態が1名
最小意識状態というのは
植物状態よりも認知レベルが
少し上がった状態で、
「自分自身または外界を意識しているという行動上の証拠が最小ではあるが確実にある」状態
と定義され、
意識にムラがあり、痛み刺激に反応
したりする意識レベルが
ときどき現れる状態です
12年間植物状態の患者らの脳活動を
fMRI で調べながら、
今、スーパーマーケットにいますか?
今、病院にいますか?
あなたの名前はスティーブンですか?
といった具合に、言葉で質問をすると、
yes と no に対応して
前頭葉や頭頂葉などの活動が変わった
ということなのです
現在、自身が置かれている環境も
把握していたということですね
勿論、植物状態の全ての患者が
このような応答をするという
わけではなく、
ごく少数ながらおられ、
実際には「閉じ込め症候群」
である場合があるということです
「閉じ込め症候群」というのは
合図として使う眼球運動以外には
表情を示す、動く、話す、または
意思を伝達することができない覚醒
および意識の状態のこと
垂直方向の眼球運動は可能で
目の開閉や特定回数の瞬目で
質問に答えることができます
一般的に、植物状態では
外界の刺激に反応しないのですが、
今回の論文のように、
話しかけると脳が反応したという
事例も過去に報告されています
例えば、
2006年に Science に掲載された
Owen AM らの短報によると、
Owen AM, et al. (2006)
Detecting Awareness in the
Vegetative State
Science 313: 1402.
交通事故で植物状態になった
23歳女性の被験者の脳活動を
fMRIで計測しながら、
テニスをしているところを
イメージしてもらうと
補足運動野(SMA)の活性が上がり、
一方、
自宅の家の中を歩き回るところを
イメージしてもらうと
海馬傍回、後頭頂小葉、運動前野外側
の活性が上がっていました
それらの反応は
健常者と同じだったのです
身体反応はなくとも
脳はちゃんと反応している
脳ってタフですね
(おしまい)
文:生塩研一
お読みいただきまして、ありがとうございました。
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