このところ、

クマゼミの鳴き声が小さくなり

ツクツクボウシの鳴き声が

聞こえるようになってきました



少しずつ

季節が進んでいるのでしょうか




さて、


昨日の続きの

脳が時間を計るという時間知覚の話で

今回は最近の具体的な論文を

紹介しますね



時間知覚の導入的な話は

昨日のブログ↓を参照ください

『脳はどうやって時間を計るのか?』



そこでは、

脳の中のどこで時間を計っているのか

ということについては、

時間を計る専門領野があるというのと

いろいろな所で分散的に計っている

という大雑把に2つの見方があります

と書きましたが、


今回ご紹介するのは、後者の

いろいろな所で計っているという見方



より具体的には、感覚野の視覚野で

計っていることがわかったという、

ヒトを使った実験です



Salvioni P, et al. (2013)
"How the Visual Brain Encodes and Keeps Track of Time"
J Neurosci 33(30): 12423-12429.






まず、

実験で使われた、

時間の長さを比較する課題について



画面に

青い丸が一瞬表示され(16.7ミリ秒)

ちょっとして、また一瞬表示されます



この2つのフラッシュで

区切られたのが、計るべき時間



こういう時間の与え方を

空虚時程(empty interval)と言います



一方、ずーっと表示して与えるのを 

充実時程(filled interval)と言います



ずーっと表示されると

ずーっと刺激を受けることになりますが、

空虚時程ですと

時間だけを与えることになり

時間知覚の実験に適していると言えます



これが、一つ目の時間で

約1秒後、

同じように二つ目の時間を呈示して

長い方をキーボードのボタン押しで

答えてもらいます



つまり、

最初の青い丸のフラッシュから

2番目のフラッシュまでの間に

一つ目の時間を計って、


2番目のフラッシュの後に

その結果を一旦覚えて、


3番目から4番目のフラッシュで

二つ目の時間を計って比較する

という流れです



時間の長さは 0.2秒前後と結構短いです



このとき、

脳の視覚野に磁気刺激を与えます



これは、

経頭蓋磁気刺激法(TMS)と言って

8の字コイルで磁場を発生させ

頭蓋骨を通して脳を磁気で刺激します



脳のニューロンは電気に反応しますが

電気的活動の実体は

電位感受性のチャネルや

Naイオンなどの流れですから

磁場を与えても反応します



例えば、

手を動かす領域に向けて

磁気刺激をすると

手がぴくっと動きます



磁気刺激は脳を外から勝手に

活動させますから

脳の活動の邪魔をすることになります



ついでながら、

脳表面を細い電極での電気刺激に比べ

刺激範囲が広く、大雑把な範囲の

刺激になってしまいます



実験では、先ほど書きました方法で

計62名の被験者に

時間の長さを比べる課題をしてもらい

その間に、視覚野に磁気刺激をして

その影響を調べています



視覚野は広く、さらに分類されています


今回、磁気刺激をしたのは

1次視覚野(V1)と

5次視覚野(V5)/MT野



V1 は網膜からの視覚情報が

大脳皮質に入る一番最初の所です



その後、V2、V3、V4、V5 と

視覚野内で処理が進みます



V5 は MT野とも呼ばれ

物体の動きを処理します



V5 は視覚野の最後の段階ですが

一番重要な入力は V1 から受けている

と考えられています



実験では、

1番目と2番目のフラッシュの間の

時間を計っているときと、

2番目のフラッシュの後で

1つ目の時間長を覚えているときの

2つのタイミングで

V1 もしくは V5/MT を磁気刺激して

時間の長さを比較する課題の

成績をみています



実験の結果、

時間の長さを計っているタイミングで

V1 や V5/MT に磁気刺激を加えたとき

時間比較課題の成績が悪くなった

とのことです



時間を覚えるタイミングでは

V1 と V5/MT ともに磁気刺激では

影響がなかったそうです



明るさを比較する実験でも

磁気刺激の影響はなかったことを

確認していますので

V1 と V5/MT は時間の長さを計る

ことに関係していると考えられます



この実験により

視覚野も時間の長さを計るということ

が実験で初めて分かったのです



今後は、

実際にどうやって計っているのかを

実験動物を使って詳細に調べていく

ことになると思われます



視覚野だけでなく

前頭前野や頭頂葉などでも

時間を計ることに関係していることが

分かっていますので

脳がどうやって時間を計っているか

という全体像を把握するには

まだまだ時間がかかりそうです





(おしまい)





文:生塩研一



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