この4月、アメリカのオバマ大統領は
脳の研究を推進するため
2014年から1億ドル(約100億円)
を投じると発表しました
Obama Unveils Details of New Human Brain Mapping Initiative
この計画は
Brain Activity Map Project
もしくは
BRAIN Initiative
とよばれます
後者の BRAIN は
Brain Research through Advancing Innovative Neurotechnologies
の頭文字を拾ったもの
上手く作ったものです
1990年代から進められた
ヒトゲノム計画と同程度の
大規模プロジェクト
EU でも似た動きがあります
2013年からの10年で
12億ユーロ(約1,500億円)を投じて
脳機能の解明に乗り出し
情報科学とも融合させて
人工脳を作るのだとか
Human Brain Project
これには、
沖縄科学技術大学院大学や
理化学研究所脳科学総合研究センター
といった日本の研究グループも
参加しているようです
「日本の研究機関がヒューマン・ブレイン・プロジェクトに参画」
日本も遅ればせながら
「革新的技術による
霊長類の神経回路機能全容解明」
ということで、今後10年をかけて
脳研究を推進すると発表しました
総額で数百億円規模とか
『脳解明は10年計画 文科省が構想発表』
革新的技術による霊長類の神経回路機能全容解明構想について(平成25年6月6日)
計画では、マーモセットという
小型のサルを中心に進めるようです
これまでマーモセットの使っていた
研究者はそれほど多くなく
あまり研究の積み上げがない動物で
ちょっと心配ではあります
しかし、
対象とする動物を絞ったことで
個々の研究もつながりますので
いい面もあります
脳科学ではまず
各脳領野の機能を調べます
これには、
これまでよくやられてきているので
技術的な問題はないでしょう
お題目の「革新的技術」というのは
多数のニューロンで構成される
ニューロンネットワークの
動的な活動を調べる
ということも含まれます
多数のニューロンの電気的な活動を
同時に記録する技術は進歩しまして、
現在では、約1万個のニューロン活動を
同時に記録できます
ヒトの脳は全体で1000億個以上の
ニューロンがありますので、
1万個のニューロンといっても
脳全体では、ごく一部に過ぎません
ここで、
さらなる大きい問題があります
多数のニューロン活動を同時記録して
膨大なデータが溜まりますが、
それを有効に調べる解析法が
ほとんどないです
巷に言われる、「ビッグデータ」の
問題が脳科学にもあるということです
実際の情報処理過程を理解するには
ニューロンの複雑なネットワークを
時間を追って調べないといけません
しかし、現在の脳科学では、
脳のそれぞれの領域が
どのような機能をもっているか
を調べることに終始しています
多数のニューロンの活動を記録する
技術は進んできていますので、
それらのビッグデータを解析する
技術の開発が必要とされています
その解析法として
私も10年前に論文を発表しました
Oshio K, et al. (2003)
Neuron classification based on temporal firing patterns by the dynamical analysis with changing time resolution (DCT) method.
Biol Cybern 88(6): 483-449.
ニューロン活動は、
ときどきニューロンが発火するという
離散的時系列なのですが、
多数のニューロン活動を記録したデータ
について、
各ニューロンの活動の時間パターンを
客観的に評価して、
その類似性でニューロンを分類しよう
という解析法です
先見性があるでしょ?
と言いますか、当たり前ながら、
まだまだまだまだまだ足りません
ビッグデータの解析法は
いろいろな分野で急務であり
分野横断的な開発体制が必要です
(おしまい)
文:生塩研一
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