そう言えば、


前々回からの味覚シリーズは

京都大学霊長類研究所の研究者らが

先日発表した論文を紹介しようとして

書き始めたのでした


Gonda S, et al. (2013)
Expression of taste signal transduction molecules in the caecum of common marmosets
Biology Letters 9(4) 20130409



京大のプレスリリース
「盲腸に味覚? コモンマーモセットの盲腸における味覚情報伝達分子群の発現」



3回目にして、ようやく

当初予定していた論文に

たどり着けそうです





前回は、5つの基本味の感じ方

について、少し詳しくみてみました


拙ブログ
「味を感じるしくみ(2)」


塩味、酸味、うま味は

イオンチャネルという穴から

イオンが流入するのがきっかけなので

イオンチャネル型



甘味と苦味は

味細胞表面の受容体が

糖や苦味物質と結合するのが

きっかけとなるので

受容体型



受容体型では、

味覚受容に関わるタンパク質が

分かり始めています



例えば、味細胞には

gustducin(ガストデューシン)

というGタンパク質がありますが

これがないノックアウトマウスでは

塩味や酸味への応答は正常なのに、

甘味への応答はなくなり

苦味への応答も弱まったとのこと



gustducin は、甘味と苦味に

関わっているということですね




また、味細胞には TRPM5 という

チャネルもあり

これがないノックアウトマウスでは

甘味と苦味への応答がなくなります




つまり、

gustducin と TRPM5 は

甘味と苦味の受容に関係している

ということです





さてさて、

先日、京大の研究グルーップが

発表した論文ですが

コモンマーモセットという小型サルは

盲腸でも味覚を受容している

という内容です


$プラスサイエンス-コモンマーモセット

コモンマーモセット
(京大のプレスリリースより)




このブログでの味覚シリーズ

特に、前回から今回にかけて

お読みいただけると

プレスリリースの内容が

簡単にわかるようになります



端的に言いますと

gustducin と TRPM5 が

コモンマーモセットの大腸の

特に盲腸で見付かり、しかも

舌でみられるより多かったとのこと



このようなことは、他の霊長類

(ニホンザル、ヒヒ、リスザル等)

では見られないので

マーモセット科に特有らしいです



マーモセットは、樹脂や樹液を

盲腸で発酵させるので

それと関係があるとか




近年、

内臓でも味覚受容されることが

知られつつありまして

食欲や血糖を制御していることが

分かってきています



例えば、ヒトの腸で gustducin

が見付かっています


Margolskee R, et al. (2007)
T1R3 and gustducin in gut sense sugars to regulate expression of Na+-glucose cotransporter 1
PNAS 104(38): 15075-15080.






前置きが長くなってしまいましたが

これくらい書かないと

プレスリリースに出てくる、

gustducin とか TRPM5 って何?

とか

プレスリリースの図2で

どうして苦味が使われたのか

わかりませんよね



気になりませんでしたか?



このブログをお読みになった方は

お分かりいただけたと思いますが、

あれは、塩味や酸味を使っても

変化が見られないのですよね




こうして、

手間をかけて理解していくと

理解も深まり、面白くなります


さらなる研究結果も

分かりやすくなります


科学は積み上げの学問です




今回の味覚の話は

とりあえずここまで。




(おしまい)




文:生塩研一



お読みいただきまして、ありがとうございました。
コメントもお待ちしています。お気軽にどうぞ~!


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