今年の1月、
記憶についておもしろい論文が
発表されました

載ったのは、
超一流科学雑誌の Science

日本人の研究成果です

Hirano et al., "Fasting Launches CRTC to Facilitate Long-Term Memory Formation in Drosophila" Science 339(6118) pp. 443-446 (2013)


科学技術振興機構のプレスリリース




結論から言いますと、

空腹状態には、記憶力がアップする

ということなのです



実験では、ハエを使っています


ハエと人間で関係あるの?


ご心配なく


記憶のメカニズムには
ハエからヒトまで共通している部分が
結構あるのです



まず、これまでの
ハエを使ったの記憶の実験で
分かっていることはですね。。


そもそも、ハエは
電気ショックを嫌い、砂糖水を好む
という性質を使います


ハエに、ある匂いと電気ショックを
同時に与えてやると

匂いと電気ショックが関連づけられ

電気ショックを嫌うハエは
その匂いを避けるようになります

これを、嫌悪学習といいます


逆に、ハエに、ある匂いと砂糖水を
同時に与えてやると

匂いと砂糖水が関連づけられ

砂糖水が好きなハエは
その匂いに寄ってくるようになります

これを、報酬学習といいます



この嫌悪学習と報酬学習には
学習効率に違いがありまして


報酬学習は1回だけで、
ずっと忘れないようになります

つまり、
ある匂いと砂糖水を同時に与えるのが
1回だけで、その後ずっと、
その匂いを好むようになるのです


ところが、嫌悪学習では何度も何度も
学習させる必要がありました

15分おきに、匂いと電気ショックを
何度も何度も与えないと
その匂いが嫌いにならなかったのです

$プラスサイエンス-ハエ学習

ハエの嫌悪学習と報酬学習
(上記プレスリリースより)


一見、問題なく見えるこの実験ですが

報酬学習では、ハエが砂糖水を
ちゃんと飲んでくれるようにと、
空腹状態にして実験していたのでした


今回の論文の研究者らは、
この「空腹状態」に注目したのです!

素晴らしい。。


つまり、
嫌悪学習と報酬学習の違いは
好き嫌いの問題ではなく
空腹かどうかが問題なのではないかと


そこで、
ハエを9時間から16時間絶食させて
匂いと電気ショックを同時に与えると

なんと1回だけで、
その後はその匂いを避けるように
なったのでした!


嫌いなことを覚えにくいのではなく
空腹状態ではなかったから
覚えにくかった

ということだったのですね




ちょっと専門的になりますが

長期記憶には、
CREBタンパク質が関わりますが、

その CREB を活性化するタンパク質の
一つである CRTC が重要あることを
研究者らは突き止めています


そして、
空腹時にはインスリンが低下しますが
人為的にインスリンを低下させると
CRTCが活性化し、満腹時でも
1回で学習することがわかりました


整理しますと、

空腹状態(インスリン低下)
 ↓
CRTCが活性化
 ↓
CREBが活性化
 ↓
記憶力アップ


ただし、
過度の空腹で飢餓状態になると
嫌悪学習の長期記憶は形成されない
ことも分かっていまして
適度な空腹状態が鍵なようです




暗記したいときは、空腹時に

というお話でした



(おしまい)







お読みいただきまして、ありがとうございました。

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