わたし達が派遣されてしばらくが経った。
派遣開始の時に、数ヶ月後に産休に入ると紹介された社員さんは「私が復帰してきた時も辞めずにいてね…!」と意味深な言葉を残して産休育休に入って行った。
相変わらず総務Mが煩わしかったが、なんとか上手いこといなし方を会得し、日々乗り切っていた。
たまに元同僚Mが「総務Mさんは私よりプルちゃんのこと気に入ってるからさ〜。私総務Mさんに嫌われてるし」とこれまた意味深なことを言うのが気になった。
わたしが気に入られてるかはともかくとして、元同僚Mは体調崩しやすいとかで休みがちだし、総務Mさんになにか注意された時に口答えをするので、たしかに総務Mさんは元同僚Mのこと嫌いやろなぁとは思っていた。
同じM同士仲良くしろやと今なら思う。
そんなある日、元同僚Mが体調不良で当日欠勤した日だった。わたしは主任Tと、その次に社歴の長い同じ課のYさんに呼び出しを食らった。
何かしでかしただろうか…!?と不安になりながら、会議室で3人きりになった。
「最近元同僚Mさんとはどう?」
主任Tが切り出した。
私「どう…って…?普通です、仲良くさせてもらってます」
Y「うんうん、2人が仲良くしっかり仕事してくれてるから、こちらとしても助かってるよ」
…ということは、お叱りではない…?一体なんの話なんだろうと心がザワついた。
T「…実は、今日はプルさんに伝えといた方がいいと思うことがあって呼び出したの」
私「はい…?」
T「派遣営業Sさんとは連絡取ってる?」
私「はい、月に1回程度仕事どうですかとお伺いの電話が来ます」
T「そうだよね。多分元同僚Mさんも同じく派遣営業Sさんと連絡取ってると思うんだけど…あのね、元同僚Mさんが、派遣営業Sさんに、プルさんがあまり仕事ができないという風に報告してるみたいなの」
私「え…?」
T「少し前から派遣営業Sさんからこちらに連絡が何度か来ていてね、プルさんの勤務態度や仕事の調子を確認してきたの。それで、プルさんは良くやってくれてますって私達は答えてたんだけど、随分しつこいの。だからなんで2人派遣さんがいてプルさんのことばかりそんなに聞くんですかって聞いたら、実は元同僚Mさんが、"一緒に仕事してるプルさんの仕事の出来が悪くて足を引っ張られてる"っていう相談を、派遣営業Sさんにしょっちゅうしてるそうなの」
私「…」
Y「あのね、今日はちょうど元同僚Mさんもいないから言うけどね、元同僚Mさんは今日みたいに休みがちだし、仕事もその…早いんだけどミスが結構多いの。それを本人に指摘したら、言い訳がすごいし、バレないように工作もしてたことがあって…。それに比べてプルさんはミスしても正直に言ってくれるし、私たちはプルさんの方が仕事ができると思ってる。だから、派遣営業Sさんが言ってることと随分違うなと思って、少し前から私と主任Tさんで話し合ってたの」
T「プルさん達2人は今のところ◯年◯月までの契約ってことになっていて、その後もうちで働いてもらうか、契約満了になってしまうかは正直今はわからないけど、例えば契約満了になって、今と同じ派遣会社でまた仕事を紹介してもらうってなった時、派遣営業Sさんの認識では"プルさんは仕事がイマイチ"ってなってしまってるから、良い仕事が紹介されないなんてこともあると思うの。でもそれは事実と違うから、私達はこのままじゃ良くないと思う。私達からも、プルさんは仕事できなくなんかないですよって再三言ってるけど、派遣営業Sさんは…ほら、ああいう人だから、"でも元同僚Mさんが言ってたので!"って聞いてくれないの」
Y「多分だけどね、元同僚Mさんはこれまでも事務経験があって、プルさんは未経験だったでしょ。その時点で、派遣営業Sさんの中では"仕事の出来=元同僚Mさん>プルさん"って固定概念もあると思うんだよね。だから1度、派遣営業Sさんとプルさんでちゃんと話した方がいいと思って、今日呼び出したんだ」
…なんということだ。
元同僚Mが、派遣営業Sにわたしを下げる発言を…!?あんなに仲が良いのに…仲が良いと思ってるのはわたしだけなのか…!?いやしかし、この2人の勘違いということもある…でも派遣営業Sがしつこくわたしのこと探り入れてるのが事実だから、今日この2人はこんな時間を取ってくれた…ということは…???
突然のことで頭ん中めちゃくちゃ。
この2人が予想以上にわたしのことを買ってくれてるのは正直びっくりしたし、嬉しかったけれども、それどころじゃ全然ないよね。
なにがどうなってこんなことに…!?
派遣営業Sよ、どういうことなんだ!!
後編に、続く───(キートン山田)