転倒
いつも、撮影は、時間に追われている、次の撮影場所に急ぐあまり、足元を確かめなかった。
気持ちばかりが焦っていた。
その場所は足場はあまりよくはなかったのだが、何度もロケしている場所だったから、少し油断があった。
何の前触れもなく、前方に転倒した。
見事に転倒した。
足が何かに引っかかったという感触も何もなかった。
なぜ、転倒したのか分からなかった。
身体が前方に倒れていく時の記憶はほとんどなかった。
一瞬、思ったのは、カメラを壊してはいけないという事だった。
カメラは左手に持っていた。
前方に倒れた身体を右手だけで支えた。
ほとんど、うつ伏せの状態になりながらも、カメラを持った左手は、地面に接触する事はなかった。
倒れた衝撃で、ズボンが破れた。
受身のようにして、身体を支えた右手が痛む。