青い手紙 15
畠山氏の葬儀の日取りが決まらないのは、葬儀の段取りに手間取っているということではなくて、他に理由があるような気がした。畠山家としては身内だけで密かに葬儀を行いたいという理由があるのではないかと思われた。
私は、畠山純一氏の家に電話をした。電話の応対に出たのは、メイドのようだった。私は名前を告げた。メイドは私の名前を覚えていた。
「葬儀の日取りは決まりましか」私が訊いた。
「いえ、まだ決まっておりません」丁寧な口調でメイドは答えた。
「喪主は、畠山純一さんということでいいんですね?」私がそう言うと、受話器の向こうでは、十秒ほど沈黙があった。
「その予定ですが・・・」メイドは言葉を濁した。
「畠山純一さんは、故人の畠山氏の実の御子息ではありませんね」
また、受話器の向こうで沈黙があった。
「はい」メイドはほとんど聞き取れないような小さな声で言った。
「ということは、畠山純一さんが喪主になるとも決まっているわけではなくて、別の誰かが、・・・、つまり、故人の畠山氏の実子が喪主になるかも知れないということですね」
「申し訳ございませんが、わたしにはお答えすることができません」そう言って、メイドは電話を切った。
畠山純一が故人の畠山氏の実子ではなくて、他に実子がいることが分かった。喪主が決まっていないということは、畠山純一と実子とが揉めているということだろう。