青い手紙 14 | 創作ラボ2

青い手紙 14

「ほんとの事を言ってもらおう」

所轄の山田と名乗る刑事が私のオフィスを訪ねてきた。


こういう人物が訪ねて来ることは予想はしていたが、警察の人間が私のオフィスにいるというのはあまり気分のいいものではなかった。


「私はほんとの事を言っている」


「コンビニに買い物に行くためだけに、わざわざ探偵に依頼するはずはないだろう。しかも、死人が電話をしてきたなんて話は、3才の幼児でも信じない」テーブルを挟んでソファに座っていた刑事は、身を乗り出すようにして言った。


「畠山さんは、自分では買い物に行くことができないから、私に買い物の依頼をしてきただけだ」私がそう言うと、刑事は犬が車に撥ねられたような奇声を発して笑った。


「畠山さんの幽霊と話していたというのか。いったい、誰と話していたんだ」語気を強めて刑事は言った。


「以前に一度も畠山さんの声は聞いたことないし、面識もない。ただ、電話の声は老人のように思えた。私に言えるのはそれだけだ」


「すでに死後六時間は経過していた。その死体が電話をするはずがない。我々は通話記録も調べた。間違いなく、電話は畠山さんの部屋の電話から発信されている。受話器には、畠山さんと、あんたの指紋しかついていなかった。指紋は、拭き取れば消える。指紋のことはたいした問題ではないが、誰かがあの部屋から電話をしたのは間違いない。もちろん、幽霊ではない、生きた人間だ」何かを探るように、彼はじっと私の目の奥を見ながら言った。


「畠山さんの死因は何ですか?」


「分かりやすく言えば、急性心不全だ。そういうことでいいだろう」彼は一度言葉を切ってから、続けた。「薬は薬だが、量を間違えれば毒になる」


「薬が毒になる?どういうことですか」


「それ以上は言えない。畠山さんが死亡した後は、畠山一族には波風が立ちそうだな」彼は口の端に奇妙な笑みを作って言った。


「どういうことですか?」


「そういうことを調べるのが、あんたがた探偵の仕事だろう。畠山さんの長男の畠山純一は、畠山さんの実の息子ではない」


「実の息子ではないというのは?」


「探偵だろう?そのあたりのことを調べてみたら何か面白いことがあるかもしれないよ」そう言うと彼はソファから立ち上がった。そして言葉を続けた。「また訪ねるかも知れない」


「もう来ないでほしいものだ」私は立ち去る彼の背中に声をかけた。