青い手紙 12 | 創作ラボ2

青い手紙 12

「サニーアップコーポレーションでございます」と、受話器の向こうで、女性の声が言った。


死亡した畠山氏が元会長を務めていた、グループ企業の中核企業が、『サニーアップコーポレーション』だった。私は、畠山氏の葬儀の場所と日取りを知りたいことを、透明感があって、明朗な声の持ち主の受話器の向こうの女性に訊いた。


電話回線はどこかに回された。私は三十秒ほど待った。


次に受話器の向こうから聞こえてきたのは、もはや透明感は失われて、ややトーンも低くなっている女性の声だった。その女性の声は、私の身元を確かめるために、元会長の畠山氏のとの関係を、遠まわし的な表現で、しかも、的確に訊いた。


私は、仕事上で、畠山氏にお世話になった者だと、答えた。もちろん、実際は、お世話にはなっていない。お世話になるか、あるいは、私が畠山氏をお世話するかも知れなかったが、もう、彼はこの世の人ではなかった。


受話器の向こうのキャリアを積んだと思える女性の声は、ごく内輪での葬儀を執り行う予定で、まだ、場所も日取りも決まっていないと返事をした。葬儀の場所と、日取りが分からないのであれば、直接、喪主の方のお宅に伺って、お悔やみを申し上げたいので、喪主の方の住所を教えていただきたいと、私は営業用のトーンで、特別な感情が声に現れないように言った。


キャリアを積んだ女性の声は、受話器の向こうで、数秒間途切れた。誰かと話しているような気配が受話器の向こうから感じられた。少し、困惑したような声のトーンだったが、彼女は、喪主の住所を教えてくれた。