青い手紙 8 | 創作ラボ2

青い手紙 8

何が起こるのか予測できなかった。私は、時間が過ぎるのをじっと待った。数秒間、何も起こらなかった。そして、また、ドアにノックの音がきこえた。


「畠山さん」と、ドアの外から女性の声がきこえた。

私は何も返事をしなかった。何事もなく、ドアの外の女性が立ち去ってくれることを願った。しかし、私の期待通りにはならなかった。


ドアがゆっくりと外側に開いた。女性と私の目が合った。30歳の半ばを過ぎているだろうか、やや面長の、瑞々しさの欠けた顔はほとんど化粧をしていないようだった。


「あなたは、どちら様ですか」女性は少し驚いたように、目を大きく開いて怪訝な口調で言った。

「あなたこそ、どなたですか」私が訊き返した。

「わたしは、ヘルパーです」彼女が答えた。

「なるほど。でも、もう、畠山さんにはあなたは必要ないようです」私は彼女から視線をはずして、畠山氏の温もりのない顔のほうに顎を向けて言った。

「どういうことですか」彼女は少し語気を強めて言った。

「部屋の中に入って、畠山さんの顔を見ればわかります」


彼女は部屋に入って、畠山氏の顔を見た。彼女は異変に気づいた。何も言葉を発することもなく彼女はその場に座り込んでしまった。


「畠山さんには、持病があったのですか」私は、座り込んだ彼女を見降ろしながら言った。

「ええ、心臓がよくなくて」彼女は呼吸が深くなり、大きく肩を震わせながら言った。

「とにかく、警察に連絡しましょう。それとも、救急車のほうがいいでしょうか」私がそう言っても、彼女は肩を震わせているだけで何も答えなかった。私は、部屋にある電話で警察に連絡した。