青い手紙 4
私が書きとめた依頼主の住所には番地だけしかなかった。生気のない依頼主の声は確かに番地だけしか言わなかった。
アパートの名前と、部屋番号は言わなかった。ただ、言い忘れただけだったのか。それとも、私が書き忘れていたのかは分からない。
三階建ての木造のアパートだった。外壁のペンキは所々、いびつにはげていた。建てられてから二十年以上の年数は経過しているものと思われた。
階段の下には、自転車置き場があった。5台の自転車が置いてあった。そして、3台のスクーターがあった。
階段の一番上の三階の踊り場の上に、『象アパート』とか書かれた木製の看板が取り付けられてあった。
文字はほとんど消えかかっていた。奇妙な名前だった。なぜ、『象』なのかは分からなかった。
電話の声の様子から判断すると、依頼主は高齢者のようだった。だとすると、階段を上り下りすると足腰に負担がかかるだろうから、三階にはいないだろうと判断した。
私の判断は正しかったようだった。依頼主の部屋は、一階の、階段からもっとも離れた場所にあった。