青い手紙 1
朝から、全く一本の電話もなかったし、訪問者もいなかった。
いつものことだった。
私は、オフィスのソファに座って、天井をながめていた。
今日も一日、何の依頼もないだろうと思っていた。
一日中、ソファに座っているのは身体によくない。少し散歩でもしようと思って、ソファから立ち上がって、ドアまで歩きかけた時、小さなデスクの上の電話が鳴った。
やれやれと、思いながら、私は受話器を取った。
「はい、神上調査事務所です」と、私は営業用のトーンで言った。
受話器の向こうでは全く何も音が聞こえなかった。間違い電話か、いたずら電話だろうと思って、私は受話器を置こうとした、その時、「手紙を・・・」というほとんど聴き取れない、かすれた、生気のない声が聞こえた。
「手紙ですか?」私は、何か間違ったことを聴いてしまったのではないかと思って、そう聞き返した。
「そうです。手紙を届けてほしいのです」声はどこかの外国からいくつもの中継地を経由して聴こえてくるように弱々しく、そして、少し震えていた。
間違い電話なのだろうかとも思ったが、手紙を届けるという依頼は、私の仕事としては間違ってはいない。買い物の代行も、車の運転の代行も私の仕事の一つだ。手紙を届けることだって、仕事の一つになる。
「あなたから、手紙を受取って、それを誰かに届ければいいということですね」
「そういうことです」
「では、今から伺います」
私は、依頼主の住所をメモに用紙に書いた。