カラスの鳴く日 | 創作ラボ2

カラスの鳴く日

アパートの近所でカラスが泣いていた。それは、地獄の底から聞こえてくるような不気味な鳴き声だった。




カラスの鳴き声は、職場に向かう彼女の気持ちを憂鬱にした。


朝の通勤電車はいつものように、彼女からエネルギーを奪い取っていく。


まるで、巨大なカタパルトで押し出されたように、電車のドアから外へと彼女の身体は、バランスを崩しながらき吐き出された。かろうじて、彼女はプラットホームに両足で立って、アンドロイド的な歩調で改札へと向かった。


無機質的な表情でまっすぐに前方を見つめて、彼女は駅から職場に向って歩いた。


無口で冷たいコンクリートの建物の中へ彼女は入った。


職場の同僚とは、営業用の笑みを浮かべて朝の挨拶を交わす。


もうすぐ昼休みになろうとした時、彼女は、ちょっとしたミスをした。


ここぞとばかりに、課長は彼女を呼びつけて、この世のすべての悪の根源が彼女であるかのように、罵声を浴びせ続けた。


彼女は、頭を垂れて、ひたすら、課長の言葉を聞いていた。


心のかでは、彼女は、課長を何度も刺していた。「お前なんか死んでしまえばいいんだ」という言葉が口から出そうになるのを彼女は必至で抑えた。




翌日、課長は出社しなかった。


昨夜課長は、夫婦喧嘩をして、妻に、刺殺されたのだった。


やはり、カラスの鳴く日は誰かが死ぬ。