天気予報が外れた日 | 創作ラボ2

天気予報が外れた日

彼女は、憂鬱そうに、窓の外の雨を眺めていた。


雨が降るとは彼女は思ってはいなかった。


海の見える、レストランの窓際の席に彼女はいた。


レストランは、丸太を積み上げた、ログハウスのような外観だった。


このレストランを待ち合わせの場所として彼が指定した。


約束の時刻をすでに15分過ぎていた。


彼女は、彼のケイタイに電話をしてみたが、電源が切られていた。


これが、彼の答なのだということを彼女は理解した。


彼女はコーヒーを飲み干した。そして、タンクバッグとヘルメットを持って、レスランを出た。


レスランの外に出て、彼女は、惜しみなく雨の降る空を見上げてみた。雨が降り止む気配はなかった。天気予報は見事にはずれていた。


彼女の視界には650CCのオートバイが見えていた。雨の中を彼女はオートバイまで走った。


ブルージーンズにライディングジャケット姿の彼女はオートバイにまたがり、タンクバッグをタンクの上に乗せ、ヘルメットを被った。


オートバイは駐車場から海沿いの国道に出ていった。


ギヤチェンジをしながらオートバイは加速していく。


彼女の左手には海が見えていた。


海沿いの国道には次々にコーナーが現れた。


晴れていれば、海を見ながらコーナーを楽しむことができる。


しかし、雨の日はライディングに集中しなければならない。


ストレートが現れたかと思うと、その先はコーナーになっている。


前方を走っている車が突然彼女の視界から消えた。


ストレートの先で車が消失したように見えた。


ブレーキランプも点灯していたようには思えなかった。


彼女が、前方の車の消失ポイントに達したとき、国道は、ヘアピン状に右に曲がっていた。


反射的に彼女は、リアブレーキのペダルを右足で踏み込んだ。


彼女はブレーキングミスをした。


パニックブレーキングでは、リアタイヤをロックさせてはいけないという基本的な原則を彼女は守らなかった。しかも、雨の日だった。


リアタイヤをロックさせたオートバイは、リアタイヤのグリップを失いあっさりと、オートバイの右サイドを路面に激しくこすりつけながら滑った。


右側のリアウインカー、フット・ステップ、バックミラーがばらばらに飛び散った。


彼女は、オートバイのハンドルを握ったまま、オートバイと、路面に挟まれるようにして路面の上を引きずられた。


制動力を失っているオートバイはガードレールにぶつかり、センタライン側に跳ね返され、1回転して止まった。


彼女は、体の右半身を下にして、走行車線の中央で動かなくなった。


「天気予報・・・・」彼女はフルフェイスのヘルメットの内側でうめくように言った。