神を見た | 創作ラボ2

神を見た

ある人のことで、頭の中は支配されていた。


目は前方を見ているはずなのに、頭の中では映像として処理されていなかった。


前方の車が右折するために停止していることに気付いた時には、時速60キロで走っている車がフルブレーキングしても停止できる距離ではなかった。


一瞬、衝突して、エアバッグの中に自分の頭が沈み込む光景が見えた。


しかし、見えざる神秘的な手によって、ハンドルは繊細な動きをして、タイヤと路面との摩擦による白煙と、スリップ音を残し、縁石と、停止している前方の車の間のわずかな空間を私の車はすり抜けた。


何が起こったのか、私には説明はできなかった。


『鈴鹿の130Rで神を見た』と、かつて、アイルトン・セナは言った。


まさしく、私も、神を見たのだ。


あるいは、別の何かに守られていたのか。


私は、あることに気づいた。


財布の中を見ると、そこには、小さな、お守りが入っていた。


鈴虫寺のお守りだった。


わらじをはいたお地蔵さんが私を守ってくれたのだろうか。