安西は絹が作ってくれた心尽くしの朝食を堪能した。
大根と油揚げの味噌汁を旨いと続けておかわりをした。
相模湾の取れ立ての刺身の盛り合わせ以外は、鯵の干物に大根おろし、厚焼き卵、野菜の煮物手製のイカの塩辛、香の物等の家庭的な献立が安西は嬉しかった。
「こんなに美味しい朝食は久し振りです」
と言って絹に向かって一礼をする。
絹も満更ではなさそうに微笑んだ。
「ずっと一人暮らしで、朝食はあまり手をかけませんでしたから。
旨い、本当に美味しいです」
漣は自分が食べる手を休めて、安西の若々しい食欲を満たす姿を嬉しそうに眺めていた。
こんなにも一人の人間の仕草を愛しく思える事に無上の喜びを感じていた。
いつしか舞い落ちてきた風花は本格的な雪に変わっていった。冷えきった道路や木々を白く染め始めた。
大雪になる前に箱根を出ようと漣は外の景色を眺めて思った。
つづく一

この物語はフィクションです。