「安西、私を見くびらないでくれ。
私は人を見る目は確かなつもりだ。
君への思い入れは別にしても、あの写真集制作の時に君の様子を観察させてもらった。
君には、天賦の才能があると見たからこそこうして薦めているのだ」
「漣さん…」
安西は暫くの間口をつぐんで考え込んでいた。気を悪くしたのではないかと漣は気が気ではなかった。
やがて、安西は意を決した様子で漣を真っ直ぐに見つめて話し始めた。
「判りました。漣さん、後2年待っていただけないでしょうか?
ご存知にのように京浜クワイヤーズは去年、リーグ優勝を逃しました。
今年は絶対に優勝と日本一を狙いたいのです。そして、僕自身も後2年連続で最多勝を取りたいと思います。そうすれば、一つの金字塔を建てられます。
それで充分です。
それからはずっと貴方の許で働きたいと思います」
「2年一。
たった2年で良いのか?
それで君は野球を諦められるのか?」
「精一杯、全てを尽くして物事をなすのが僕の信条です。
年月の長さではありません。
後、2年を野球人として全てを賭けてやり通せば何の悔いもありません」
「安西一」
そうは言っても頂点を極めた道を後2年で去るというのはどれほど辛い事か。自分の為に、自分に報いる為にそう決意してくれたこの若者の一途さを思うと漣は胸がつまる思いだった。

つづく一

この物語はフィクションです。