やがて、有沢は夢から目覚めた。
身体中を激痛が走る。
あの野郎一。
さすがだぜ。
自分も空手の有段者だが、鍛えぬかれた現役プロスポーツマンの敵ではなかったか一。
有沢は自嘲めいた笑みを洩らした。
「有沢さん、面会です」
看護師が事務的に有沢に告げた。
面会ってこんなに早くと思ったが現れた人物を見て有沢は顔色を変えた。
「漣一」
驚きでしばし呆然とした。
しかしやがて悪態をつき始めた。
「何の用だよ。漣大明神さん。俺があんたの大事なお宝を訴えるとでも思ったのかよ!
そんな事出来る訳ねえだろう!こっちの腕が後ろに回るわ!」ほぼ全身に包帯が巻かれた惨めな体をよじらせて有沢はわめいた。
漣はそんな有沢に向かっていきなり頭を下げた。
「有沢君、君には本当にすまない事をした。
この通りだ」
漣は頭を下げ続けた。
「あ、あんたが俺に頭を下げるなんて夢にも思わなかったぜ」「大体の事情は弓子から教えてもらった。
判ってやってくれ。
彼女は君を犯罪者にさせたくなかったんだ。
一君が私を恨むのは当然だ。
あんな真似をされれば誰だって一」
有沢はまともに漣を見られずにそっぽを向いた。
「あの時、何故あんな真似をしたのか一その訳を言いに来た」有沢は憎々しげに漣を睨み付けた。
「俺に華がねえって事だろ。
ケッ!何を今更一」
「—違う。私は君をそんな風に思ってはいない。
当時から素晴らしい雰囲気を持った、若手の中でも秀でた存在だと思っていた。出来れば主演俳優として使いたいと一」
有沢はそれを聞いて驚いて漣を見つめた。
「じゃあ、じゃあ、どうしてあんな一」
有沢は少し口よどんでから思いついたことを口にした。
「俺が…潮書房の息子だから」「それも確かにあった。
しかし、違うんだ。
私の方に身勝手な事情があったのだ」
それから暫く漣は沈黙した。
やがて意を決して話始めた。
「私の父、漣泰造は…悪魔だった。
あの男は一度も正式な結婚をしていない。
それでいてあちこちに愛人を作り、子供を何人も産ませた。
そしてその中の数人を後継者候補として養子にした。
その中の一人が私だった。
子供に最初からハンディを背負わせて、ライバル心を持たせて一番有能な者に全てを譲ると一あいつは人間ではなかった。
犬畜生にも劣る人非人だった」「…」
あまりの事実に有沢は口を挟む余裕もなかった。
「そんな男がただ一度心を奪われた女性がいた。
君の母上だ。
しかし、当時新人女優だった君の母上は父からの求愛には答えず、潮書房の御曹司である君の父上を選んだ。その事をあの男は理不尽にもずっと恨んでいたのだ」
漣は体を怒りで体を震わせながら続けた。
「10年前一
父は私にこう告げた。
お前に全てを譲ろう一
だが一つ条件がある。
あの潮書房の次男坊、あいつをこっぴどく痛めつけるんだ。判ったな、それが最後の条件だと一」
「そうか、それであんたは!」有沢は漣を睨み付けた。
「母上に生き写しの君に対してあの男はずっと複雑な憎しみを抱いていたのだろう…。
そして、私は自分の野望を叶える為にあんな真似をしてしまった」
漣は、有沢の前に土下座した。
つづく一
この物語はフィクションです。
身体中を激痛が走る。
あの野郎一。
さすがだぜ。
自分も空手の有段者だが、鍛えぬかれた現役プロスポーツマンの敵ではなかったか一。
有沢は自嘲めいた笑みを洩らした。
「有沢さん、面会です」
看護師が事務的に有沢に告げた。
面会ってこんなに早くと思ったが現れた人物を見て有沢は顔色を変えた。
「漣一」
驚きでしばし呆然とした。
しかしやがて悪態をつき始めた。
「何の用だよ。漣大明神さん。俺があんたの大事なお宝を訴えるとでも思ったのかよ!
そんな事出来る訳ねえだろう!こっちの腕が後ろに回るわ!」ほぼ全身に包帯が巻かれた惨めな体をよじらせて有沢はわめいた。
漣はそんな有沢に向かっていきなり頭を下げた。
「有沢君、君には本当にすまない事をした。
この通りだ」
漣は頭を下げ続けた。
「あ、あんたが俺に頭を下げるなんて夢にも思わなかったぜ」「大体の事情は弓子から教えてもらった。
判ってやってくれ。
彼女は君を犯罪者にさせたくなかったんだ。
一君が私を恨むのは当然だ。
あんな真似をされれば誰だって一」
有沢はまともに漣を見られずにそっぽを向いた。
「あの時、何故あんな真似をしたのか一その訳を言いに来た」有沢は憎々しげに漣を睨み付けた。
「俺に華がねえって事だろ。
ケッ!何を今更一」
「—違う。私は君をそんな風に思ってはいない。
当時から素晴らしい雰囲気を持った、若手の中でも秀でた存在だと思っていた。出来れば主演俳優として使いたいと一」
有沢はそれを聞いて驚いて漣を見つめた。
「じゃあ、じゃあ、どうしてあんな一」
有沢は少し口よどんでから思いついたことを口にした。
「俺が…潮書房の息子だから」「それも確かにあった。
しかし、違うんだ。
私の方に身勝手な事情があったのだ」
それから暫く漣は沈黙した。
やがて意を決して話始めた。
「私の父、漣泰造は…悪魔だった。
あの男は一度も正式な結婚をしていない。
それでいてあちこちに愛人を作り、子供を何人も産ませた。
そしてその中の数人を後継者候補として養子にした。
その中の一人が私だった。
子供に最初からハンディを背負わせて、ライバル心を持たせて一番有能な者に全てを譲ると一あいつは人間ではなかった。
犬畜生にも劣る人非人だった」「…」
あまりの事実に有沢は口を挟む余裕もなかった。
「そんな男がただ一度心を奪われた女性がいた。
君の母上だ。
しかし、当時新人女優だった君の母上は父からの求愛には答えず、潮書房の御曹司である君の父上を選んだ。その事をあの男は理不尽にもずっと恨んでいたのだ」
漣は体を怒りで体を震わせながら続けた。
「10年前一
父は私にこう告げた。
お前に全てを譲ろう一
だが一つ条件がある。
あの潮書房の次男坊、あいつをこっぴどく痛めつけるんだ。判ったな、それが最後の条件だと一」
「そうか、それであんたは!」有沢は漣を睨み付けた。
「母上に生き写しの君に対してあの男はずっと複雑な憎しみを抱いていたのだろう…。
そして、私は自分の野望を叶える為にあんな真似をしてしまった」
漣は、有沢の前に土下座した。
つづく一
この物語はフィクションです。