「何を言うんだ。
安西、興奮しては駄目だ。
横になりなさい」
漣は、安西を横たわらせようと体に手をかけた。
安西は漣にすがって叫んだ。
「いいえ、どうしても貴方に言わなければ一
僕の気持ちがすまない一僕は…」
「判った一。
話があるなら聞こう。
だから落ち着きなさい」
漣は安西にペットボトルの水をあけて手渡した。
安西はそれを少し飲んで、一つ大きなため息をつくと話し始めた。
「一僕の両親と妹は5年前の羽田沖の航空機事故で亡くなりました」
漣は頷いた。
「全くお人好しの家族でしたよ一。
最後まで機内に残っていて、重傷者を出した直後の爆発に巻き込まれて一あっけなく」
事情を知った時の安西の気持ちを思うと、漣の胸は痛んだ。
「同じ事故で嫌な言い方だけど他に犠牲者がいたならまだ救われた一。
でも、犠牲者は僕の家族だけでした。
だから僕はずっと孤独だった。誰一人、僕の気持ちなんか判らない、判る訳がないと思ったんです」
何故今ここでこの話を彼はするのだろう?
漣は少し不思議に思った。

つづく一

この物語はフィクションです。