「社長一」
日下は安西が休んでいる部屋に行こうか否か迷っている漣に声をかけた。
「どうぞ彼が落ち着くまで彼の側にいてやってください。
私は、安西君を誤解していました。
正直言って、社長がお心をかけているのをいい事にそれを利用しているなどと思ったりもしました。
しかし、今回の件でよく判りました。
彼は素晴らしい人間です。
社長が惹かれるにふさわしい青年だとも思います。
ですから一」
漣は日下の眼を見つめて言った。
「ありがとう。君もよくやってくれた。
本当にありがとう」
微笑んで首を振る日下に促されて漣は安西が休む部屋に向かった。
安西はゲストルームのクィーンサイズのベッドに横たわっていた。
鎮静剤を射たれはずなのに、その目は大きく見開かれ天井の一点を見つめていた。
(何と言って詫びればいいんだ。
何の関わりもない有沢にあんなひどい目にあわされて。
それも自分一人ならいくらでも逃げられたものをレミを人質にとられてやむを得ずあんな仕打ちを受けたのだ。
私がもっと有沢の動きに気をつけていれば一。安西、本当にすまない)
そう謝りたくても、なかなか切り出せずにいた。
つづく一

この物語はフィクションです。