一方、漣は弓子との会話を再開した。
(それで、有沢は2人をどこへ連れて行くつもりなんだ?)
(潮書房の新規事業で建設中のマンションよ。もう完成していて御披露目を待つばかりのね。住所は一)
弓子は詳しく所在地を教えた。(判った一。
しかし、何故有沢はそんな真似を一)
弓子は声を荒げた。
(自分の胸にきいてみれば、判るでしょ。
あなた、10年前に有沢にした事を忘れたとでも言うの?
まあ、あいつもしょうがない奴だけどあの事だけは私は有沢に同情するわね)(一一)
思い当たる事のある漣は、黙って唇を噛み締めた。
(有沢はずっとあなたを恨んでいたわ。
でも、直接あなたにぶつかる度胸はない。
だから搦め手(からめて)からあなたを苦しめようとチャンスを狙っていたのよ)
(判った一。
とにかく、知らせてくれたのは感謝する。
ありがとう。
しかし、お前はそれでいいのか?
有沢はお前の一)
恋人だろう、そう言いかけて漣は口をつぐんだ。
馴れ合いにせよ何にせよ、パーティーではあれだけ仲睦まじくしていた2人の姿を思い浮かべた。
(私も、迷ったわよ。
私の性格は知っているものね。憎からず思っていなければ、絶対につるんだりしない女だって一。
だけど、もし有沢の思い通りになってそれを私が知っていて黙っていたのが、あなたに判ったら一
あなたは一生私を許さないと思ったら切なくなったのよ)
(弓子一)
(急いで行ってあげなさいよ。日下君も連れて行くといいわ。手下もいるし、有沢も空手の有段者だから。
あなた1人の手には余るわ)
(ああ、そうしよう。
今からすぐに行く)
漣は携帯を切った。

つづく一

この物語はフィクションです。