安西はサングラスをかけ、レミを前に歩かせて駐車場を出ようとした。すぐに携帯でタクシーを呼ぼうとコートの内ポケットに手を入れた時、前方から悲鳴が聞こえた。
「どうした?」彼が目を向けた途端に、喉元に細く鋭いナイフが突きつけられた。
「誰だ!?」
安西はその男を見た。
「貴方は、有沢さん一」
派手な茶色のジャケット姿の男は口元に薄笑いを浮かべた。
「一俺を覚えていてくれたとかい。
それは光栄だ。スーパースターの安西君」
「一体、何の真似ですか?
悪い冗談はやめてください!」安西は怒りを込めて有沢を睨んだ。
「おっと、静かにしてくれないと君に熱愛を寄せる美少女がこの世から消えることになるぜ」BMWの後部座席に若い男に無理やり捕らえられているレミの姿が目に入った。
安西は黙って有沢に従うしかなかった。
彼等も大型車の後部座席に乗り込むとBMWは駐車場を出て行った。
「有沢さん、僕達をどこへ連れて行く気なんだ?」
「まあ、そういきり立つなよ。いや、それにしてもグッドタイミングだったなあ。
あそこで待っていれば、いずれは来ると思ったがまさにドンピシャリだった」「…吉本君に偽手紙を送ったのはあんただな」「この子は学生だからね。
人混みに紛れて手紙を鞄に入れるなんて簡単なものさ。
この子があのパーティーでお前さんと知り合ってから夢中になっているのは見え見えだったからな」
「…」
安西は何故有沢が自分やレミにこんな仕打ちをするのか見当がつかなかった。
つづく一

この物語はフィクションです。