1月10日一。安西はその日、佐伯との恒例の合同自主トレーニングを終えて帰路についていた。
2週間の中伊豆での山籠りだった。
漣の誘いを断ってのトレーニング合宿だった。(佐伯さん、今年は特別に厳しかったな)
佐伯は、合宿中常に寡黙だった。
決して愛想の良いタイプでは無いのだが、それでも安西に対しては冗談の一つや二つは口にしたし、自分の夢などを話してくれる事もあった。
その彼が今年に限っては憮然とした態度でしか接してくれなかった。
トレーニングの内容は5歳年少の安西が根をあげるほど厳しいものだった。
帰る当日も昼過ぎまでみっちりトレーニングをしていたので、体はクタクタだった。
佐伯と別れて自宅マンションに帰りついたのは6時近かった。漣はハワイから帰国していて、3日後から日下と共に日米合作映画の打ち合わせにニューヨークに旅立つ予定になっている。彼が帰国する頃には、既に和歌山でのキャンプが開始になっている。
気まずい別れ方をしたままなのが安西の心を曇らせていた。
このまま漣とはもう会えなくなるのではないかと胸寂しい思いがした。

つづく一

この物語はフィクションです。