年が明けて、正月5日一。
六本木の高層マンションロダン・ヒル。
有沢信吾は、父親が所有する最上階の一角で居住していた。
眼下には目も覚めんばかりの夜景が見事だった。
有沢は書斎のパソコンからの報告を読んで、一人口元に歪んだ笑みを浮かべた。
「ぬかりはないと思うがな。
もう一度、打ち合わせをしておこう」
37、8の明らかにやくざ者と判るパンチパーマの男と何事かを話し合った。やがて、男は一礼すると部屋を出て行った。
入れ替わるようにして、30代半ばの女が入ってきた。
「よう一弓子。よく来たな」
「明けましておめでとう。
有沢のお坊っちゃま」
弓子はミンクのコートを置くと辺りを見回した。
「本当にいつ来てもここには惚れてしまうわ。貴方と付き合っているのも、半分はここに来たいからかもね」40歳の貫禄と20代半ばの若々しさを兼ね備えた肢体が緋色のワンピースの上からも窺えた。
(漣や他の男達をくわえこんできた体か)
そうは思っても有沢は弓子の身体に惚れている。
背後に回って思い切り抱きすくめた。
「今夜は、泊まっていくか?」耳朶を口に含みながら、途切れ途切れに尋ねる有沢に
「残念だけど、今夜は帰るわ。とあえぎながら弓子は答えた。「正月早々、子供達を置いて外泊は出来ないものね」
「そりゃ、立派なお母様だ」
有沢は小馬鹿にしたように笑った。

つづく一

この物語はフィクションです。