今日は、早めに外出するのでいつもより早く更新します。
ご了承ください。

名誉

そして、床に置いてあった紙袋から壁に飾ってあるポートレイトのミニチュア版を取り出した。
「これを彼に渡してくれ。
壁にあるのは、お前さんに進呈するよ。
俺が一番好きな絵だ。
漣、安西君を頼む。
俺がフランスに行っている間、何もしてやれない俺の代わりに支えてやってくれ。
あの子は芯は強いが辛い過去を背負っている。何かあった時に守ってやってくれ。
それが俺の頼みだ」


「木次さんがフランスへ一」
手渡されたポートレイトを眺めながら、半ば呆然と呟いた。
木次がひっそりと日本を発った翌日、漣は木次から託されたポートレイトを渡す為に彼を銀座の会員制レストランに誘っていた。
食事を終えて、クラブに場所を変えてから漣は木次の渡仏を伝えた。
「でも、どうしてこんな急に一。
何かあったのですか?」
信じられないという面持ちで問いかける安西に漣はその真の理由を話しかねた。
「彼なりに思うところがあったのだろう。
大丈夫、パリには優しい奥さんが彼を待っている。
君にもよろしくと言っていた。きっと一回りも二回りも大きくなって帰ってくるだろう」
「でも一残念です。
木次さんにならもっと撮って欲しかったです。このポートレイトもまるで僕じゃないみたいで一。
こんな平凡な男をこんなに素晴らしく撮ってくださる人なんて他にはいませんよ」
その台詞を木次が聞いたらどんなに喜んだだろうと漣は秘かに思った。

つづく一

この物語はフィクションです。