「君は、ロバート・スタンフォード氏に会ったんだな」
「ええ、漣さんに紹介されました」
「そう気安く社長を漣さんなんて呼ぶなよ。
まあ、いいや。あれはな、本当は俺が行くはずだったんだ。
それを社長は土壇場になって俺を無視して君を連れていった。それは社長が気まぐれでした事で勿論君はそれを知らないだろう。
だから君を恨む筋合いではないのは承知しているよ。
だが他の事でも君が社長の気を惹いてあの方の関心を全部自分に向けようとしているのは、見え見えなんだよ。
なあ、頼むから社長にこれ以上近づくのはやめてくれないか」安西は、ハア?というような表情を浮かべてから答えた。
「貴方がそんな事を言うのは、どう考えてもおかしいですよ。僕は部外者で、貴方は漣社長が育てあげた大スターでしょう?どちらが大事かなんて言うまでもないでしょうに」
「それがそうじゃないから、俺は苛立っているんだよ。
社長はただ自分の出版社から写真集を出しただけの君の方が大事なのさ」
2人は2、3分黙って睨みあっていた。
やがて、日下は年長者らしく言い聞かせるように話し始めた。「俺は、社長には大変世話になった。
出来れば、あの方が俺にしてくれた恩の万分の一でも報いたいと思っている。だけど、俺がいくらそう思ってもあの方が振り向いてくれなければ報いようがないじゃないか。
そうは思わないか?」
「一一」
安西は何も答えなかった。

つづく一

この物語はフィクションです。