第4章

如月夕子がその愛くるしい面輪を青ざめさせて漣文庫の本社を訪れたのは、スタンフォードとの会談から数日後のことだった。
漣はその日は出版社の社長として、会合に出席していた。
夕子は秘書を通して漣に面会を求めた。
丁度、会議も区切りがついた所だったので漣は夕子に会った。「どうした?
君が本社に来るなんて、珍しいな」
微笑みかける漣に夕子はそれどころではないという切羽詰まった表情で告げた。
「社長、大変です。
日下さんが安西さんと話をつけると言って事務所に呼びつけてしまいました」「日下が?
あいつがどうしてそんな真似をを」
「日下さん、スタンフォード氏との会見をそれは楽しみにしていました。
それが突然出来なくなって、とても悲しんでいます…」
夕子は日下との約束を破った社長を少し咎める口調で続けた。「それに、去年から社長が少しも自分に関心を持ってくれなくなったと悩んでいました。
それで、安西さんに社長とこれ以上親しくしないようにと頼むんだと言っていました。
でも、すごく興奮していて一
私、口止めされていたのですが心配になって」「…判った。
よく知らせてくれたね。
しかし、日下はよく安西君のメールアドレスを知っていたな」「それは、どうもレミちゃんから聞き出したらしいのです。
レミちゃん、創立記念パーティーの時に安西さんとメアドとか色々交換していましたから」
「そうか。
日下の奴…。
とにかく、よく知らせてくれたね。
ありがとう一。しかし、日下はまさか安西君に乱暴する気でいるのか?
いくら彼が一流のスポーツマンでも日下には敵わない。
体格の差以前に彼は、ボクシングのセミ・プロだ。
ボクサー映画に主演したくらいだからな。
日下は生きている戦闘マシーンだ」

つづく一

この物語はフィクションです。